【~~最強のアンデッドと化した元英雄~~】 暗黒騎士《魔王》として女聖騎士(勇者)と対決・・・するはずが・・・? えっ! 悪堕ちっ!? (;´゜д゜`)❗❕

ノートリンデン防衛戦
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

その時がきた

公開日時: 2021年11月6日(土) 14:00
文字数:3,655

「クロト、行こう」


「そうするよ」


 教会の裏手、それは右隣の建物との間を通れば行ける。

 ここも広場ほどではないが、それなりに広いな。

 町の西側と違い、こっちは被害が少なかったようだ。

 レストランや雑貨屋が、夜遅いのにまだ営業している。


 ポリーヌの後を歩く、クロト。



(・・・客は兵隊が多い? 連中は金を落として行ってくれるからな・・・ん? ポリーヌの顔が赤い・・・どうしたっ! 風かっ! 連日の激務で体を壊したかっ! 熱でも有るんじゃないか? ・・・)


 兵隊連中からポリーヌに視線を移した、クロトは彼女の顔が赤いことを気にする。



「顔が赤いぞ、大丈夫なのか?」


「そ、そんな事はない、心配しなくていい」


 今日は激戦だったから疲れたのか、顔も赤いだけでなく、キラキラと光っている。

 汗だろうか、相当疲れているんだな。

 今夜は、もう休めっての・・・ポリーヌ、体は大事にしなきゃな。


 クロトは、ポリーヌを心配したが彼女は気丈に振る舞う。



「そうか、それより怪しい奴がどうたら聞いたが?」


「ああ、それは他の隊の兵士の見間違いだったようだ」


 エリックはきちんと報告したらしいな。

 何人かの怪しい奴を見たと、ザワザワ騒いだ兵士達。


 あれは、魔皇軍の連中が化けた潜入工作部隊だ。

 連中のお陰で事が楽に進んだな、感謝だぜ。


 クロトが、ポリーヌに質問すると、思惑通りに事が運んだので、声には出さずに喜んだ。



「暗黒騎士は恐ろしい奴等だからな、一人で一個中隊を全滅させる力を持っているからな・・・私の先輩達も・・・」


「も・・・?」


 これは過去に何らかの出来事があったな。

 聞かないでおこう、言いたくはない事だろうし。


 しょんぼりした、ポリーヌの横顔を見て、クロトはそっとする事にした。

 余計な詮索は、出来るだけしない方が良いと言うワケだ。



「そんな奴の容疑が掛かっているのか、俺は・・・」


「そうだ、と言うか来たな? あの二人だ」


 ん、本当か、ポリーヌ。

 あ、二人が来たな。


 いつの間にか、後ろから歩いて来ていたぜ。


 クロトとポリーヌ達は、並んで向かって来る、シノブとリーヌス達を見つける。



「お前達、来たか・・・聞きたい事があるんだけど・・・」


「あら何でしょう、昼間も私達に質問しようとしましたね?」


「何なりと? おや、あの黒い影は・・・」


 よし、シノブとリッターの芝居は完璧だ。

 後は俺も振り向いて。


 クロトの質問に平然と答え、上手く演技するシノブとリーヌス達。



「暗黒騎士っ? 何故ここにっ!」


「暗黒騎士だとっ!? いかん、三人とも逃げろっ!! くぅ~~私を狙って来たか?」


 よし、ポリーヌも確りと奴を見ているな、計画は順調だ。

 鎧は魔皇軍の兵士に着せたし、刀は三本ともダークスライムに、コピーさせた。


 俺の監視役である、エリックを引き剥がしたのも、この為だ。


 さて、奴は教会の屋根から何をする気だ。


 見事な演技をしながら、クロトはポリーヌと一緒に暗黒騎士《ソックリさん》の出方を待つ。



『ドンッ!!』


(・・・石畳が吹き飛んだっ! 飛び下りたか・・・それから俺達を殺りに来るっ!! 手はずだ・・・)


 次の行動を予測し、咄嗟に鞘に納めた長刀オオタチの柄を握りしめて身構える、クロト。



「下がってくれ、コイツの相手は私がするっ!」


 ポリーヌは、波刃長剣フランベルジュを抜いたか。

 そして、奴も長刀オオタチを抜いて真っ向から来た。



「誰かぁ~~援護してぇっ!」


「我々も助太刀するっ!」


「俺だって、逃げねぇよっ!!」


 シノブは、忍刀シノビガタナを背中から取り出す。

 リッターも、背中の薙刀クーゼを振るって、刃の切っ先を暗黒騎士《ニセモノ》に向ける。


 俺も、片手半剣カッツバルゲルを引き抜いて構えた。


 奴は、真っ直ぐポリーヌを狙う。



「ぐっ! 貴方達・・・有り難う」


 よし、ポリーヌは長刀オオタチの攻撃を受け止めたか。

 良いぞ、偽物・・・そのまま彼女を押し倒せ。


 それから、俺達が前に出る。

 お前はそれで、形勢不利を悟って、さっさとズラかれ。


 と、考える、クロトだったが。



「ぐぅぅ~~~~!! だあっ!?」


(・・・あっ! まさかの押し返しだとっ! ポリーヌ・・・流石は隊長を張るだけはあるな・・・)


 鍔是り合っていた、暗黒騎士《にせもん》とポリーヌ達の戦いに感嘆する、クロト。



「居たぞ、暗黒騎士だっ!」


「待て、射つなっ! 味方に当たるっ!」


 兵士達が気づいたか、射撃は無理だろう。

 下手に援護したら、俺達に当たるもんな。


 聖光騎士団の兵士達も、味方を前に誤射を警戒して手は出せない。



「くぉらっ! 喰らいなさいっ!」


「次は我々の番だよっ!」


 ポリーヌの左右から、二人が攻撃に出たか。


 右からは、シノブが。

 左からは、リーヌスが。


 シノブは、逆手に持つ忍刀シノビガタナを振るう。

 暗黒騎士の首を狙った斬撃だ。

 リーヌスの方は、薙刀クーゼの刃を頭に向かって突き出す。



『カンッ! コロンコロン、コロコロン・・・』


「クッ・・・」


 当然だが、二人の攻撃は直撃しない。

 シノブの刀は、奴の刀に受け止められ、リーヌスの薙刀クーゼは兜に当たる。


 予めに決めた予定通りだぜ、これで兜が脱げた。


 計画通りに進む芝居に、クロトは良しと思った。



「チッ!」


 ふぅ・・・暗黒騎士の顔が見えた、俺と同じ顔。

 変装だけど、ポリーヌにはバレないだろうな。

 これで、俺と暗黒騎士《やつ》は別人だと認識するだろう。


 舌打ちした、暗黒騎士《みがわり》を睨む、クロト。



「兜が脱げたか・・・」


 そんな物はどうでもいい、大きくステップした。

 左足の爪先で兜を蹴り上げたか、それ拾ったら、さっさと逃げろよ。


 暗黒騎士《まがいもの》の呟きに、ツッコミを入れる、クロト。



「よっ! 暗殺は失敗したか、ならばここは大人しく撤退させて貰う」


 右手で、兜を持ち上げた奴は、頭に被り直した。


 芝居がかった優美な動きで、兜を華麗に被る、暗黒騎士《かえだま》。



「それでは去らばだ」


 格好付けてねえで、さっさと消え失せろ。

 周りを兵隊に囲まれちまうぞ。

 そうなったら、偽物《ニセモノ》だとバレちまうだろが。


 暗黒騎士《べつじん》の予期せぬ芝居に内心焦る、クロト。



(・・・頼むから早くしてくれっ! 頼むからよ・・・)


「逃がすかっ!!」


「ハハッ? そんな攻撃が効くものかっ!」


 俺の片手剣カッツバルゲルを避けてる暇があったら、そのまま逃げろ、アホか・・・。


 焦りながらも、クロトは剣を振るって、暗黒騎士《なかみがちがう》に立ち向かう。



「暗黒騎士が逃げたぞっ!」


「未だっ! 撃てっ!」


『パンッ!』


『ダダダダダダッ!』


 アチコチから銃が発射されたな、だが暗黒騎士は飛び去ったと。


 奴は、足が早いからな。

 屋根上を走る奴の追撃は困難、それどころか無理だろう。


 教会の正面に行ったなーー。

 追い付ける奴は、流石に騎士団には居ないよな。


 いや、居ないだろう。


 これにて、終わりだと安心するクロト。



「居たぞーー!!」


 イーサンの声だ。

 正面の連中が仕留めようと、四方八方から銃を撃っているな。


 大きな声に反応する、クロト。



「逃げられたか、奴の狙いはあんたのようだな?」


「ええ、そう見たいね? 地下で出会った時から因縁をつけられた見たいね・・・」


 リーヌス、そうだ、奴の狙いがポリーヌの暗殺だったと誘導してくれ。


 因縁をつけられた・・・か、確かにな。

 まあ、つけられたのは俺の方だがな。


 出会った時から、いきなり攻撃だもんな。

 そして、今に至るまで、ずっと後を追われているもんな。

 それも、別人だと嘘を信じて貰って終わった所だがな。


 全てが終わった、クロトは肩の力を抜いた。



「なぁ? また顔を赤くして、大丈夫か?」


「はっ? あ、い、だっ! 大丈夫だわ、そう・・・大丈夫」


 顔が赤い、と言うか真っ赤っかだ・・・凄く辛そうだ。


 クロトは、やはりポリーヌの顔は紅いが体調は大丈夫なのかと気になる。



(・・・マジもんの命の取り合いを演じた所だもんな? あの暗黒騎士《フェイク》の正体は魔皇軍の兵士・・・つまり暗黒騎士《ものほん》ほどの技量ではない・・・)


 たった今、終わりを告げた戦闘は芝居とは言え、激しい戦いだった。



(・・・とは言え奴も中々の腕前だったっ! それを真剣に相手したんだ? よほど疲れたんだろう・・・ 今日はもう休め? ポリーヌ・・・)


 戦闘に集中して、疲弊したのであろう、ポリーヌを気遣うクロト。



「これで、貴方は暗黒騎士の容疑が晴れたわ・・・明日は皆に説明するし、憲兵にも事情を説明するわ」


「分かった、これで晴れて自由の身だな」


 自由の身、ようやく暗黒騎士の容疑が晴れたか。


 やっと解放されると分かり、安堵する、クロト。



(・・・これで自由だ・・・やっと疑いが晴れたぜ・・・)


 明日からは自由の身だ。

 ーーと言いたいが、二人に魔皇軍の事を聞かなければ。

 明日からも色々面倒だな、あ~~今日はもう寝よう、ベッドまで早く行こ。


 今夜の芝居で疲れきってしまった、クロト。



「話はまた明日だ、明日にしよう」


「分かったわ、私達も疲れたし」


「それで良いぞ」


 シノブ、リーヌス、お前らにも詳しい話を聞くぞ、それは明日だけどな。


 そう、もう今晩は情報を整理しながら話す時刻ではない。

 だから、クロトと二人の話し合いは明日の朝と成った。

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