「あっ! 喰らええっ!」
「うわっ!! 危なっ!!」
(・・・女騎士による俺の首を狙った斬撃だっ! このくらい、後ろに下がれば・・・)
クロトは軽く攻撃を回避する。
「なっ!?」
まさか、回避するとは思わなかっただろう。
あの顔は絶対にそう思ってるな。
と、彼は女騎士見て推測する。
(・・・さぁ今だっ! 逃げ出し・・・)
また前から、だけでなく左右からも。
左からは、メイスが。
右からは、杖が。
と言う具合に、クロトには若い男性騎士と女僧侶らしき、二人からの攻撃が迫る。
「おわっ! よっ! くぅっ!」
前から繰り出された斜め斬り・・・これは後ろに。
メイスの打撃には拳の打撃で。
長い杖に着火された、炎は振り払えば。
と、クロトは軽く攻撃を避ける。
(・・・やっぱ凄いな? この鎧? 高級品なだけはある・・・物理攻撃は勿論? 魔法攻撃まで敢然防御してしまうとは・・・)
当たった炎を、気にするクロトだが、黒い鎧は焦げ後すら無かった。
「邪魔をしないでくれっ!」
オオタチでやる。
命までは取らないが。
若い男。
髪の長い女。
最後は女騎士。
三人纏めて叩くっと、クロトは飛び出す。
『バンッ! ガッ! ドガッ!!』
「うっ!!」
「ぐわっ!」
「くぅぅぅ」
武器を叩いてやったが。
メイスを両手で握っていた男は壁に。
杖を握っていた女は地面に。
女騎士だけが何とか耐えたようだ。
こいつ等と遊んでいる暇はない。
人間の命は取りたくないしな。
そう、クロトは思うが。
しかし、そこに女騎士の波刃長剣フランベルジュの光る切っ先が迫る。
「もう行かせて貰うっ!」
「あっ! 行かせはしないぞっ!!」
『バチッ!』
邪魔をするか、ならば、その突きだした剣の波打つ刃、回避するまでだ。
か~~らの右手で押し倒しをーーやべ、掴まれた。
不意打ちを仕掛け、敵を怯ませようとした、クロトはドジッてしまった。
(・・・不味いっ!? このままでは女騎士の仲間からフルボッコにされてしまう・・・)
『ドンッ!』
しまったーー。
女騎士に掴まれて、一緒に倒れてしまったか。
アレ・・・れれれ・・・。
等と思い、焦りまくる、クロト。
『カランカランッ! コテンッ!』
「あり? あ・・・」
(・・・ヘルメットがーー今の衝撃で何処かに? アソコかっ!? つうか? この状況は不味いっ! 女騎士の顔が近いっ! よくよく見れば中々の美人だし・・・と考える前に、早く退かなければ・・・)
そう、クロトが考えている間に、周りの騎士達は。
「隊長から離れろっ! アンデッドめっ!」
「うわっ! 止めろっ!! 危ねえだろがっ!?」
女騎士に馬乗りに成っている絵面は、そら不味いだろうな。
俺の顔面を目掛けて、蹴りが繰り出されたぜ。
即座に離れて回避だ。
右に転がって見れば、後ろに居た大柄な奴だな。
奴は女騎士を助ける積もりだったのか。
仲間思いだな、感心するぜ。
クロトは騎士達の仲間を救おうとする精神に感心した。
「ここから先には行かせんっ! お前は包囲されている、観念して成仏するんだな」
戦斧バトルアックスを担いで、俺を睨まれてもな。
奴は殺る気満々だ、殺気が伝わって来る。
大柄な騎士に対して、クロトは睨み返すが。
(・・・ん? 周りの奴等も包囲してきたか・・・)
見れば、後ろに若い若い男。
僧侶みたいな女、と言うより僧侶か。
そして、女騎士も立ち上がったか。
不味いなーー。
四対一、数は圧倒的に不利。
冷静に状況を分析する、クロト。
(・・・ならば? 突破するのみっ!! ・・・)
「退けぇーーーー!!」
「逃がさんぞっ!」
真っ向から斬りかかる、クロト。
対する相手の大柄な騎士は、戦斧《せんぷ》バトルアックスを振り回す。
(・・・勿論だが俺それをオオタチで受け止め・・・る筈がないっ! 姿勢を低くしてしまえば・・・)
「なっ! コイツ、下をすり抜けやがったっ!?」
振り回された、戦斧バトルアックスの刃。
そんな物、頭を下げつつ左側を通ってしまえば、どうと言う事はない。
次いでに転がった兜も回収してと・・・。
クロトは、素早く行動しながら次なる一手を考える。
「まっ! 待てぇーーーー!?」
「逃がすかぁ~~~~!!!!」
大柄な男と女騎士が、後ろから走ってくる。
追いかけて来ようが、俺が止まる事はない。
外を目指して脱兎の如く逃げるだけだぜ。
そう考える、クロトはひたすら洞窟内を走り、同じような作りの部屋に出た。
左右を見ても行き止まりなので、また走るしかない。
前方の大穴にだ。
それから、またかなり長い洞窟を彼は走る。
「まあ~~てぇ~~!!」
女騎士が追ってきているな。
他の三人の部下もだ。
喧《やかま》しい奴等だぜ。
クロトは、騎士達を五月蝿く思う。
「まてーーーー!」
「コラーーーー!?」
「逃がすかっ!」
大柄な男。
女僧侶。
若い男。
彼等は、後ろから遠距離攻撃をしてきた。
『ダダダダダッ!』
背後を見ては居ないが、五月蝿い爆発音と共に何かが飛んでくる。
それが、前方の岩壁に何かが当たって、カンカンと音が鳴っている。
その中には、何発もの火炎魔法の火の玉も混じる。
ボッボと壁と俺の背中に当たっているからな。
飛び散る、真っ赤な火の玉と何かは無視だ。
何故なら、明るい光が前に見えたからだ。
と、クロトの前方に出口のような物が見えた。
「なんだ? 突入チームが・・・」
「邪魔だっ! 邪魔だっつーーのっ!」
陽光を受けて、明るい金髪を更に輝かせた優男風イケメンが現れた。
洞窟の入り口を左脇から覗く奴を、俺は押し退ける。
「ぐわっ!」
「わあっ? 何だっ!」
「アンデッド騎士だっ!」
金髪イケメン騎士をどついて吹き飛ばすと。
転んだ奴を助けるべく、数人の騎士達も動く。
槍や何かを構えた連中の合間を、クロトは気にさず走り抜ける。
(・・・ここは山間部っ! あっちは・・・)
走って、走って、斜面を目指す。
斜面に来たら、まともに降りないで近道だ。
何度も何度も一直線に飛び降りる。
こうすれば、奴等を巻ける。
後は・・・ひたすら草原を駆け抜けるだけだ。
クロトは、必死で逃げる、逃げる、逃げまくる。
「はぁ~~息切れはしないな? アンデッド化したからか?」
息切れはしないが、ため息は出る。
ここまでは、奴等も追っては来られまい。
記憶が正しければ、この辺りに隕石が落下したような。
過去を思いだす、クロト。
「おっ? 町だ・・・大きいな?」
記憶を探る彼の前に、円形に作られた大きな町が現れた。
都市と言える程ではないが、アレは結構な規模だ。
さて、何処から入ろうか。
いや、俺はアンデッドだし。
入ろうにも、正体がバレたら・・・。
先ず、絶対に処刑される。
あの騎士団も、その手のプロ集団に違いない。
アレコレ、考えて悩むクロト。
「まあ、先ずは行ってから考えよう」
考えても仕方がない。
裏口のような物も有るだろう。
それを発見すれば、中に潜入する事も可能な筈だ。
また走ろう。
この肉体はもう疲れを感じないしな。
クロトは、取り合えず行動する事にした。
アレから走ったが、直ぐに町には着いた。
しかし、似てるな。
ノートリンデンに。
赤とオレンジの屋根か。
そこも似てるぜ。
町は高い外壁に囲まれているが、入る方法は・・・ない。
壁上には、巡回する警備兵がいる。
遠目に見てみれば、これは無理だと判断せざる負えない。
町に行くのは止めよう。
迂回して何処か別の場所に向かおう。
クロトは町を見て考える。
これから先、何処に行くか。
ノートリンデンは・・・今来た道を戻る事になる。
そしたら、騎士団《やつら》と再会してしまう。
ここは何処か知らんが、南東に行けばヘルトハイムだ。
小さな町だが、まだ在るかな。
何か、この町は見た事がないしな。
ひょっとして、俺が死んでから大分時間が立ったのか。
まあ、いいや。
早く、ヘルトハイムに急ごう。
クロトは、またも次なる町を目指して走る事にした。
また、走って行けば着くだろう。
あーー変身とかできればな~~。
そうすれば、アンデッドじゃなくて、人間に見えるのだろうけど。
そんなこんなを考えている暇があるんだったら。
走って、ヘルトハイムに行かないとな。
クロトは頭の中でグジグジと考えまくりながらも。
遠く、ヘルトハイムを目指して走り続けたのであった。
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