「像の一匹や百匹・・・大した事はねえぜっ!」
「パオ~~~~ンッ!?」
巨大毛象ギガント・マンモスに似てるな。
大象グランド・エレファントだったけか。
どっちにしろ、昔の像みたいな奴はもっとデカかったんだよ。
真っ黒い体をしやがって、しかも目が赤い。
巨像を前に、怯むことなく立ち向かい、睨み返す、クロト。
「アンデッド化したんだな? 安心しろ、今引導を下してやる」
巨大毛象ギガント・マンモスの時と同様、その鼻から切り落としてやる。
鼻の太さは、一メートル。
長さだけならば、八メートル。
体長は、二十メートル程だな。
走って、近付けば、近付くほど奴の巨大差が分かる。
如何に巨大な体躯を誇る、魔物と言えど。
元SS級冒険者であり、最強アンデッド化した、クロトの敵ではない。
「バオーーーーーー!!」
うお・・・凄い迫力だ。
でも、俺も同じアンデッドだ。
そんくらいじゃあーーな。
俺は、びびんねえんだよ。
像さん、命《タマ》の取り合いと行こうかよ。
素早く石畳の上を駆ける、クロトには一切の躊躇がない。
「パオッ!!」
「パオッ! じゃねぇ~~~~」
『ドドドドドドドド』
『ドドドドドドドド』
うわ・・・俺に狙いを定めて、ウォーワゴンが撃ってきたか。
だがな、そんなの俺は気にしねーー。
当たんなきゃ良いんだからな
像さん、今行くぜ。
クロト&大像グランド・エレファント達の周りを走り回り、機銃をぶっぱなす装甲車部隊。
二台の魔皇軍のピレンフィーラー2と同じく、二台の装甲車ロムフェルからなる車両だ。
「バオーーーー!?」
長鼻を上に持ち上げて鞭のように来るか、それなら。
クロトは、胴体真下に潜り込もうと一気に距離を詰めるべく、石畳を力強く蹴った。
『ドドドドドドドド』
『ブロロッ!』
『ドドドドドドドド』
『ブロロッ!』
左右から来て、俺を引き殺す気か。
ダンゴムシめ・・・。
だが、そりゃ無理な話だぜ。
何故なら俺の方が足が速いからな。
ピレンフィーラー2は、クロトを狙って互いに体当たりをして彼を挟み潰さんと迫る。
「パオ~~~~~~~~!!」
その上から来る鼻も俺は怖くない。
左から上に・・・。
左右から来る丸い鉄の塊も、上から来る大木のごとく長太い鼻も、クロトは怖がらない。
「パッパオッ!?」
こうして、下から長刀オオタチで斬ってしまえば、どうと言うことはない。
ん・・・。
また来るか、来るなら来い。
グランド・エレファントの斬られた長鼻は、三分の二までしか残っていない。
残りは、クロトの背後にボトリと落下してしまったからだ。
「パオッパオーーーー!!」
「ふっ!?」
ぶった斬られた鼻の残りで、まだ殺る気か。
アンデッドだから痛みは無いってか。
真っ赤な血を撒き散らして汚ぇぜ。
ぐ・・・大太刀オオタチで何とか防いだが。
重たい一撃を喰らったクロトだったが、それを寸での所で大太刀オオタチの腹で受け止めた。
『ブロロロロッ!!』
『ゴロゴロッ!!』
まだ諦めてなかったか、このままじゃダンゴムシに潰される。
だったら、前に進むのみだ。
長刀オオタチで、ブヨブヨの腐肉を切り裂きつつ走れば。
グランド・エレファントの腐りきり、爛れた皮膚はバターナイフがチーズを斬るようにと。
クロトの走りながらの斬撃で、腐った肉体は簡単に刃に裂かれてゆく。
『キュキュッ! ガンッ!』
『キュキュッ! ゴンッ!』
後ろで衝突したのは、ダンゴムシだろう。
見なくても音で分かる。
それより、俺は像の四肢を切り裂き、頭を狙ってからのジャンプだ。
背後に響く、鋭い金属音をクロトは全く気にせず。正面の巨像を倒さんとする。
「おらっ!」
右足、左足、後ろ右足、後ろ左足。
全部を傷付けた。
流石に、足の骨が太過ぎて切り裂く事はできなかったか。
だが、動きは鈍らせた筈だ。
今の連撃で、クロトは少しは体力を削ったはずと思ったが。
「そこまでだっ!!」
「お前が操っているのか?」
この黒フード野郎が術者か。
邪魔だ、死ね、死にやがれ。
さっさと倒せば問題ない、そう考えたクロトは術者に先手を掛けた。
「ぐふっ!」
「お前と話す暇はねぇ~~~~!!」
どこから現れたか知らんが、俺は遊んでいる暇はないんだ。
じゃあな・・・胴を跳ねてやるから、刀の錆びになれ。
大太刀オオタチの刃を振るって、腐肉と血飛沫を取らないと。
そして、像さんの下から脱出だ。
会心の一撃を術者に対して叩き込んだ、クロト。
彼は、そのまま魔物像の後ろ下から脱して、一直線に走り続ける。
『ドンッ!!』
よし、像さんを抜けて教会の前に来た。
像さんも、猫が後ろに座り込むようにして倒れな。
術者が死んで、奴も解放されたか。
南無・・・いや、アーメンか。
まあ、どっちにしろ成仏して天に昇れよ。
ーー等と思ったのも束の間、クロトの後ろからは車両部隊が迫る。
『ゴロゴロッ!』
『ゴロゴロッ!』
『キュラキュラ』
『キュラキュラ』
あーー囲まれたか。
ダンゴムシ。
何か車輪だらけのウォーワゴン。
車輪のウォーワゴン。
全部が、俺に銃を向けているな。
まあ、良いさ。
俺の剣は魔物の硬い鱗さえ切り裂くからな。
やるだけやってやる。
先ほどのピレンフィーラー2が二台。
同じく、装甲車ロムフェルが二台。
重戦車AV7が三台。
と、クロトを包囲する戦車と装甲車の部隊。
『ドドドドドドドドドドドド』
『ドドドドドドドドドドドド』
ドドって、五月蝿いな。
これくらい。
反復手動弩リピーター・ボウや連射弩ポリボロスの射撃を潜り抜けた俺にはーー。
朝飯まえだってーーの。
ヒュンヒュン赤色の口紅みたいなのが、飛んで来るが、俺にはカスリさえしない。
追い掛けて見せろ。
どうせ、俺の走りには追い付けないし、お前らの攻撃も当たらないがな。
今の戦闘より激しい戦争を潜り抜けた猛者である、クロトには多数の銃撃は通用しない。
「一発も当たらないぞ、何やってるんだ、お前ら?」
ふぅ~~。
しかし、何時までも逃げ回る訳には行かないな。
ここで、反撃に移るか。
そろそろ、長刀オオタチで。
ジグザグに、クルクルと、彼方此方《あちらこちら》に~~と逃げ回る、クロト。
「コレで、ウォーワゴンをぶった切って・・・やるっ!」
『パンッ!』
『ダダダダ』
うわわ。
凄い数の兵隊だ。
何処から沸いてきやがったんだ。
敵兵が・・・ゾロゾロゾロゾロ。
なんちゅう数だよ。
教会から、家から。
うわ~~奥に隠れて居たのか。
突如、現れた敵兵の大部隊に、クロトは驚く。
「そこまでだ、良くも私をコケにしてくれたな」
あれれ、胴体を切ってやった筈だぜ。
アンデッドだから、まだ動けますってか。
下半身が切れてるからグロイなーー。
両手を足代わりにして動くとは。
さっきの術者が再び現れた。
「パオッ!」
うわ、像さんも起き上がったか。
やっぱ、ちゃんと頭を潰さなきゃダメだよな。
更に、奴の背後で、グランド・エレファントも起き上がる。
(・・・こんだけの数を相手にするのはヤバいな・・・あちゃ~~囲まれちまった・・・)
前には、リッチと像。
左右には、ウォーワゴンと棺桶ウォーワゴン、ダンゴムシ。
後ろの教会と建物からは、多数の兵隊。
詰んだなーーと普通の人は考えるが俺は。
真っ直ぐ、リッチに向か・・・あ。
その時、遠くから。
『ドンッ! ドンッ! ドンッ!』
「ぐわーーーー!?」
「ぐあーーーー!?」
魔法か。
いや、この威力は凄いが。
いったい誰が・・・。
クロトは何処からか飛んできた、攻撃を不思議がる。
『ドンッ!!』
「ぐぎゃっ!?」
「パオ・・・」
お・・・リッチも吹き飛んだな。
像さんも、三度目の永眠だな。
運良く、敵も攻撃が吹き飛ばしてくれた。
『ドンッ! ドンッ! ドンッ!』
ウォーワゴンとか、ダンゴムシも吹き飛んだな。
てか、俺も巻き込まれちまう、早く走らないと。
遠くから来る攻撃は、石畳を叩き、土煙を巻き上げる。
「撤退、撤退だぁーーーー!?」
「うわぁ~~~~~~!!」
「逃げろーーーーーー!?」
兵隊達が逃げていく。
おい、待てや・・・町を荒らした落とし前を着けんかい。
貴様ら全員、長刀オオタチの錆びじゃ、ボケ。
内心ヤクザのように憤怒の炎を燃やす、クロトは敵を追撃しようとする。
「待ちなっ! 今までの乱暴狼藉は許さないわっ!!」
「お前達、覚悟しろっ! 我々が相手になってやるっ!」
あ・・・誰だ、アイツらは。
どっかで、見たような姿。
どっかで、聞いたような声だ。
女の方は。
黒いマッシュウルフパーマ。
ヘーゼルカラーの狼のような切れ長の瞳。
丸い犬顔。
忍者のような黒灰色の装束。
長い銃。
男の方は。
鮮やかな金色のストレートヘア。
プルシャンブルーの瞳と、キリッとした眉。
細く整った顔立ち。
黒灰色の魔術師のローブ。
薙刀クーゼ、小型貝殻盾タールフォアバックラー。
んん・・・・・・ん。
よく見れば、あれは。
暗黒騎士の二人組み。
何で二人がここに。
おそらく、奴らは前に見た暗黒騎士の中身か。
だけど何か、何かが違う・・・武器だ。
クーゼに、骸骨とかの装飾が無いぞ。
クロトは、二人組みを良く観察する。
「成敗よっ!!」
『バンバンバンバンバンバン』
『ドンッドンッドンッドンッ』
「うぎゃっ!!」
女忍者は、銃・・・を抜き取ったか。
あの女暗黒騎士と同じ奴だ。
クロトが目にする女忍者らしき女性は、短機関銃ヘルリーゲルを構えた。
「正義の鉄槌を喰らえっ!」
「ぐわわわわわっ!?」
雷撃魔法を無詠唱で放ったか。
威力はかなりの物だ。
アレに、少しでも触れたら感電死は間違い無しだな。
あの二人、兵隊を次々と倒している。
俺もボケッとしていられない。
早く追撃しなければ。
大活躍する二人組、それを見て、クロトもヤル気を出す。
「行くぜーーーーーー!!」
さあ、狩りの時間だ。
クロトは、謎の人物達だけに活躍させまいと走り出した。
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