【~~最強のアンデッドと化した元英雄~~】 暗黒騎士《魔王》として女聖騎士(勇者)と対決・・・するはずが・・・? えっ! 悪堕ちっ!? (;´゜д゜`)❗❕

ノートリンデン防衛戦
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

シュメーゲンへと クロト視点

公開日時: 2021年3月27日(土) 19:06
更新日時: 2021年11月5日(金) 16:49
文字数:4,444

「・・・シュメーゲンか?」


 東の町シュメーゲンか、懐かしいな。

 だが、今はもうすっかり変わっちまっただろう。


 時の流れは残酷だからなーーと思う、クロト。



「おいっ! 安全運転で頼むぞっ!」


「誰に物を言ってるんだい、坊や~~? 私の運転は上手いって評判だってのっ!」


 激しい揺れで、何だか気持ち悪くなってきたぜ。

 ルータに頼んで見たが聞いてくれる訳ないよな。


 クロトは吐き気を耐える。

 


「吐かれたら困るね? ハッチを開けて外の空気でも吸ってな」


「そうさせて貰うぜ」


 蓋を開いて外を見れば、他の騎士連中の背中が見える。


 全員が鉄の馬に乗っているなーー。

 女騎士が先頭だな。


 おーー騎士団員が、何人もの部隊か。

 広い草原を走る騎士団、これは絵に成るな~~。


 ハッチを開けた、クロトは辺りを見る。



『ドスドスドスドスドスッ!』


 アレも意外と早く走るんだな。

 あの真ん丸い鎧って、名前は何て言うんだろうな。


 お・・・あっちにはファット・ディアーの群れが居る。


 けど逃げ出したな。


 アイツ等は、草食性で臆病な性格だからな。

 んで、太った体の割りに脚は速いんだよなーー意外と。


 野生の魔物を眺める、クロト。



「ねーー? あんた、クロトだっけ? 何か知らんけど暗黒騎士の疑いがあるんだって・・・まーー私にはあんたが、そこまでの悪人には見えないけどさぁ」


「ああ~~迷惑な話だぜ、装備が似ているとか、顔がソックリさんだとかな」


 本当は暗黒騎士なんだけどな。


 とは言えない、クロト



「て言うか、疑いが掛かっている奴を戦地に連れていくのか?」


「ああ~~? それもそうだねーー? でも、あの女隊長さんは、あんたを信用しているんじゃないの?」


 うぅーーそう言う事か。

 しかし、期待を裏切ってしまって悪いがな。


 俺の正体はアンデッドの暗黒騎士だ。

 何か悪い気がするが、しょうがないよな。


 自らの正体を言う訳には行かぬ、クロト。



「なあ、今は戦時中なのか?」


「はぁ~~何言ってるんだい? 戦争なら五年前のカイザーシュラハトで終わったわよ」


 ルータ、五年前とか、カイザーシュラハトだが言われても分からん。


 何せ、今の俺は眠りから覚めた、浦島太郎だからな。


 母親から聞いた、おとぎ話の主人公の名前を思い出した、クロト。



「終わったのに、まだ戦争をしているのか」


「戦争その物は五年前に終わったけど、魔皇軍の残党は健在だからね」


 魔皇軍だと。

 魔物の軍隊は、お袋と親父が過去に壊滅させたはず。

 ルータ、何なんだよ、魔皇軍ってのは。


 クロトは疑問に思う。



「魔皇軍って?」


「魔物の軍隊、アンデッドを中心に構成されているんだよ」


 アンデッドの軍隊か。

 俺も、何度か不死者の集団とは戦ったな。

 お袋と親父が、コンビを組んでいた時の魔王軍の残党だがな。


 魔王が死んだ後も、魔物達は諦めなかった。

 奴等は、魔族を中心に何度か魔王軍の再結成を試みた。

 まあ全部、俺が残らず潰してやったがな。


 そして、今は俺自身がアンデッドなんだよな。


 等と、クロトが考えていると。



「おっ! 見えて来たよっ? シュメーゲンの町だっ! うわ・・・どうやら戦闘中のようだ」


「うわっ! 本当だぜ、マジで戦闘中だ」


 シュメーゲンの町は燃え上がっている。

 オレンジ色の三角屋根、三階立ての家が燃えている。


 建物も所々崩れてもいる。

 これはヤバイな・・・・・・。


 ルータの声に、町の方を見た、クロトの目には町の惨状が映る。



『パパパパパパパパッ!』


「各部隊、散開しろっ! 我々は正面から行くっ! ルキヤンの隊は左から行けっ! テルセロの隊は右からだっ!」


 女騎士の声だ、銃の音もする。


 魔皇軍とやらが暴れているのか。

 ・・・ってか、右に行くんだな。


 シュメーゲンの手前まで来たが、今度は右側から攻めるのか。


 敵が待ち構えて居ないと良いがな。

 待ち伏せで、魔法を射たれてドカンは嫌だぜ。


 伏兵を警戒する、クロトは周囲に気を張る。



「クロト、町の方を警戒してね?」


「分かってるぜ、左の方だな」


 町の外周部を、このポンコツは走るが、敵は見えない。


 ここは外側、つまり奴等は奥で待ち構えて居るのだろう。


 左側に見える建物は、壁が壊れたり、半壊した物が目立つ。

 時たま、無事な建物が見えるが、殆どがボロボロだ。


 頼むから、窓とか、半壊した壁の陰から撃って来ないでくれよ。


 右側から、迂回して町に入ろうとした俺達。

 だけどよ、まだ敵と出会ってねえぜ。


 まだ見ぬ敵に備える、クロト。



「クロト、あんた機銃掃射をお願いね?」


「良いのか?」


 ルータ、勝手に動かして大丈夫か。


 ルータから機関銃手を任された、クロト。



「良いから、私は運転に専念するから」


 じゃあ、やらせて貰うぜ。


 動かし方は何となく分かる。

 どう言う、カラクリかは分からないがな。


 クロトは、水冷式機関銃の構造を不思議に思う。



 町を外側から見ているが、さっきと同じで、建物が崩壊するか半壊した物が多い。

 オレンジ色の屋根が吹き飛んだ建物。

 壁が無い建物。

 全て崩れて瓦礫と化した物。


 左手に石畳の道路が続いているな。

 と・・・ここが町に入る入り口か。

 

 クロトは、崩れた建物を眺めて魔物が暴れたのかと考えた。



『パンッ!』


『ドドドドドド』


「敵襲ぅぅーーーー!? 壁に張り付けっ!」


 テルセロだっけ。

 おっさんの声がしたけど、他の騎士を見ている暇はない。


 クロトは、声に反応したが直ぐに敵を探す。



「どっから撃って来たんだ?」


「クロト、右から来るわっ! 魔物の群れよっ! 私達が対処するわ」


 ルータの声を聞いて、クロトが右を見ると、地面から魔物が沸きだした。



「分かったぜ、今撃つっ!」


『ドドドドドドドドッ』


 ありゃ、マッド・フロッグだ。


 緑の体が土で汚れているから直ぐに分かる。

 バリスタを俺が撃ってやれば奴等は一殺《イチコロ》だ。


 よし、矢が奴等の体を貫通した。


 頭を射ぬかれて、後ろに倒れる奴。

 腹を射ぬかれて、前のめりに倒れる奴。

 短い手足を、ド派手に吹き飛される奴。

 

 コイツら・・・弱すぎだろ。


 余りの敵である魔物の弱さに、クロトは楽勝だぜ、と言おうとしたが。



「あれれ、おかしいな?」


 一メートルの奴と、二メートルの奴が居るが、どちらも起き上がる。



「クロト、アイツ等はアンデッド化しているんだよ、全身バラバラにしないとまた直ぐに起き上がるんだ」


「分かったぜ、バラバラな?」


 ルータは左側のドアを開いて何かを投げつけた。


 その間、クロトも銃器を撃ち続ける。



『ボンッ!』


 爆弾か。

 俺が殺し切れなかった、マッド・フロッグを吹き飛ばしているぜ。


 アレは、かなりの威力だ。


 手榴弾の威力は凄まじく、クロトはバラバラに、マッド・フロッグが吹き飛ぶさまを見る。



「よし、穴から出てきたのはアレで全部ね」


 どうやら、アンデッド化した魔物は全部仕留めたようだ。


 しつこい魔物の襲撃が終わり、クロトは安堵した。



「ペペ、壁を破壊してくれっ!」


『了解ですっ!』


 テルセロが命令したら、大鎧が動き出したぞ。

 って言うか、さっきからアイツは腕から魔法を撃っていたんだな。

 腕に装備した杖《ワンド》から雷撃が飛んでいるぜ。


 町へ続く、道路の向かい側の建物に向けて撃っていた奴は歩いていく。


 中に突入する気だな。

 ん・・・建物からの攻撃が止んだだと。

 中の奴等は退散したな。

 あの大鎧《デカブツ》にビビったか。


 市外戦の成り行きを見ていた、クロト。



「ルータ、お前達は町の中に行け、ポリーヌ少尉達の援護に向かうんだ・・・向こうの方が射撃音が酷いからな」


「分かったよ軍曹、私等は行くからね?」


「先に行かせて貰う」


 テルセロとルータ達は勝手に話を決めたな。

 まあ、仕方がないぜ。


 クロトは、ルータに行き先を任せるしかない。



「そいじゃ行くよ」


「おおっ! て言うか良いのか?」


 ルータは、小型装甲車《フォードFTーB》を走らせた、じゃあ質問だ。


 クロトは、ルータに単独行動しても良いのかと問うが。



「ああ、私等だけ行けって事でしょう・・・大丈夫よ、どうせ私等の車は家の中に入れないから」


「そう言う事か、確かに無理だな」


 リータの言う通り、この車体じゃ部屋の中には入れん。


 しかも、狭くいりくんだ市街でも大した動くことは出来んだろう。

 それじゃあ、ポリーヌの所に行くしかないな。


 狭い場所で、車両が走るのは得策じゃないと、クロトは考える。



『ブロロロ~~』


 町中を、鉄車《オモチャ》は走るが誰も居ない。

 そして、石畳の道は車体がガタつくぜ。


 こっちには、敵はなしか。

 白や茶色の建物の合間を通っているが、敵の気配はない。

 が、しかし・・・こう言う時こそ、油断はできない。


 気を抜かず、街中の彼方此方《あちらこちら》に目を配る、クロト。



「来たぞっ! 投げろっ!」


『ドカンッ! ドカンッ!』


「撃って、撃って、撃ちまくれっ!」


『ドドドドドドドドドド』


 手榴弾、それに銃もか。

 クソ、オレンジ屋根の上から来やがったか。

 このバリスタ、上は向かねえんだよ。


 突発的な敵襲に直ぐに反応する、クロト。



「やっぱり、罠だったわねーー!! クロト、頼むよっ!」


「頼むよったって、どうするんだよっ!!」


 頼まれたって、どうにも出来ないぞ。

 バリスタは上を向かないわ、対空武器は無いわ・・・。


 敵に対抗しようにも、どうしようもない、クロト。



「ルータ、俺ぇ~~降りるわっ!」


「えっ! 飛び降りるって、ええっ!!」


 ルータは驚くが、答えている暇はない。

 よって、バリスタの蓋を開いてっと。

 銃塔から身を乗り出す、クロト。



「男が飛び降りたぞっ! 手榴弾を投下しろっ!」


「奴を狙えっ!」


『ドドドドドドドド』


 狙われて溜まるかよ、手榴弾は・・・。


 短機関銃からの攻撃を避けて、クロトは走り回る。



「そらっ!」


 大太刀オオタチで、弾き返してやれば。


 後の銃を撃っている奴等も、オラオラ。

 こうして、足で、瓦礫の小石を蹴り跳ばしてやれば。


 クロトは上方の敵に反撃した。



「こっちに打ち返してきっ! うわーーーー!!」


『チュドーーーーンッ!』


 よし、爆死したな。

 屋根も一緒に吹き飛んだぜ。


 派手な爆発と灰色の煙が、クロトの目には入った。



「ぐわっ!」


「小石が脳に・・・」


『ドサッ!』


『バタッ!』


 オレンジ屋根の上から、ゾンビ兵士とスケルトン兵士が降ってきた。


 嘗めるんじゃあねえーー。

 俺は手段さえ有れば、お前らくらい簡単に殲滅させられるんだよ。


 クロトは、上から攻撃してくる敵を睨む。



「怯むな、お前ら、撃てっ!」


『パンッ!』


『ドドドドド』


 お前らは俺が直接、斬ってやる。


 まずは、右上にジャンプ。

 次は左にだ。

 こうして、ジグザグにジャンプして壊れた壁を。


 クロトは軽々と身を翻しては、素早く上方へと移動する。



「うわぁーー!! くっくるなぁーーーー」


「撃ち殺してやるっ!! ぐっ?」


 ・・・上れば、連中はアタフタするだけだ。

 それから勿論、やる事は。


 一人目、大太刀オオタチで、頭から真っ二つ。

 二人目、脳天を串刺し。

 三人目、額を右から跳ねてやった。

 四人目、瓦礫を投げて右目を貫いてやった。


 このようして、クロトは敵を次々と葬る。



『ドドドドドドッ!』


「ぐわぁ~~!?」


「一人、残ってたよ?」


「ルータ、助かったぜ」


 ゾンビ兵がまだ居たのか。

 ルータ、本当に助かったよ。


 ルータの援護に、クロトは安堵した。

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