(・・・右の建物に入ったが・・・)
「像の一匹や百匹・・・大した事はねえぜっ!」
「パオ~~~~ンッ!?」
窓影からクロトを見れば。
叫び声が聞こえる。
大象グランド・エレファントに挑む気ね。
ポリーヌは窓から、クロトVSギガント・エレファントの戦いを見守る。
『ドドドドドドドドドドドド』
うわ~~激しい。
装甲車ロムフェル、重戦車AV7の機銃による制圧射撃だ。
これじゃあ、下手に近づけないわ。
対戦車用の武器が無い訳だし。
バッタ型・爆弾投射弩ソートレルも、対戦車用の手榴弾もね。
敵の装甲戦力を前に、ポリーヌ達は対抗する術も武器もない。
窓辺に当たる多数の機銃弾を、彼女は頭を下げて壁裏で耐える。
(・・・クロトの方は・・・)
私達に気が向いているからか、今の所、クロトに機銃の銃口は向いていない。
冷静に、ポリーヌは敵を観察する。
『バチュッ! パシゥッ!』
危ないわ。
私達も、身を隠さなければ。
時おり、反撃しつつクロトから気を剃らすのは良いけど。
やっぱり自分の事も大事よね。
機銃弾による銃撃が止んだ隙を見て、ポリーヌは広場を眺める。
しかし、何時までも顔を出す訳にもいかず、彼女は直ぐに首を引っ込めた。
(・・・おっ? やるのね・・・)
クロトが、走って近付くわね。
当然だけど、体格差は凄いあるわね。
が、それでもクロトの事が気になる、ポリーヌは再び窓陰から外を見た。
「バオーーーーーー!!」
ここまで、大象グランド・エレファントの咆哮が響いた。
声だけでも、中々の迫力だわ。
クロトはーー多少止まったから、ビビったようね。
でも、突撃していくわ。
大丈夫かしら。
クロトVSグランド・エレファントの戦いを、怪獣映画の如く見ている、ポリーヌ。
「パオッ!!」
「パオッ! じゃねぇ~~~~」
『ドドドドドドドド』
『ドドドドドドドド』
あれ・・・戦車隊の攻撃がクロトに向いた。
私達の反撃が足りなかったかしら。
そう言えばーー。
私は戦いに注視し過ぎたのと。
制圧射撃に負けて一発も弾を撃ってなかったわ。
急いで、反撃しなきゃ。
ポリーヌも、魔導連発小銃マジック・ルベルを構えて、立ち上がろうとするが。
「バオーーーー!?」
今度は鼻を持ち上げた。
クロトを潰す気。
高々と太い鼻を掲げた、グランド・エレファントを見て焦る、ポリーヌ。
『ドドドドドドドド』
『ブロロッ!』
『ドドドドドドドド』
『ブロロッ!』
左右からは、団子虫型戦車ピレンフィーラーが。
クロト、潰されるわよ。
ポリーヌは、またも来る敵を見て、クロトを心配する。
「パオ~~~~~~~~!!」
しかも、上から鼻も振り下ろされるし。
遂に、長い鼻がクロトを潰さんと迫る。
「パッパオッ!?」
下から刀で鼻を斬った。
でも、また来るわ、アンデッドだから痛みを感じないのね。
安堵する、ポリーヌ。
「パオッパオーーーー!!」
残りの鼻で、まだ血を振り撒きながら戦う。
無理矢理に戦わされているのね。
クロトは、大象グランド・エレファントの攻撃を、また下から防いだわ。
ねぇ、お願い、早く仕留めて上げて。
アンデッド化した、グランド・エレファントを哀れに思う、ポリーヌ。
『ブロロロロッ!!』
『ゴロゴロッ!!』
再び、団子虫型戦車ピレンフィーラーが来たわ。
クロト、今度こそ潰されるわよ。
あれ・・・オオタチで肉を切りながら走った。
左右から迫る、敵戦車にポリーヌはクロトの身を案じる。
『キュキュッ! ガンッ!』
『キュキュッ! ゴンッ!』
団子虫型戦車ピレンフィーラーは正面から、互いにぶつかった。
クロトは、巨象グランド・エレファントの四肢を切り裂きつつ走っているわ。
右、左、後ろ右、後ろ左。
凄い、これなら・・・。
あれ、敵の指揮官だわ。
ここからじゃ、よく見えないけど、奴はきっとそうね。
クロトによる鬼神の如き戦いっぷりに驚く、ポリーヌ。
「ぐふっ!」
「お前と話す暇はねぇ~~~~」
(・・・え? 凄いっ!? クロトの動きは正に鬼神の如しだ・・・あっと言う間に巨象グランド・エレファントと指揮官を倒した・・・)
隠れて見ていたが、凄い動きだったわ。
さっきから、私とエリック達は制圧射撃を避けて、建物の中を進んでいた。
それだけしか出来なかったのに、彼はあの活躍ぶりだ。
戦車隊は、私達に機銃を向けていたが、今はクロトに銃口を向けている。
敵の装甲車ロムフェルも、重戦車AV7もだ。
窓から外を伺うが、彼は戦車隊の銃撃を走りながら華麗に交わす。
次々と放たれる銃弾をまるで気にしていない。
単騎で、敵に正々堂々と戦いを挑み、あっという間にボス敵を撃破した、クロト。
ポリーヌは彼の活躍ぶりに驚きつつ、建物内を進む。
『ドンッ!!』
「しまっ!?」
敵か・・・後方から来るとは。
覚悟を決めねば。
壁を壊して来た連中を、拳銃ルビーで。
後ろから鳴った破壊音、それに反応する、ポリーヌ。
「ポリーヌ隊長、ここに居ましたか」
「テルセロ軍曹? それに貴方の隊ね?」
機械鎧アイアン・ゴーレムの後ろから、テルセロ軍曹がヒョッコリ出てきた。
「丁度良かったわ、機械鎧アイアン・ゴーレムでクロトを援護して上げ・・・」
「あっ!? それはまった方が良いですよ」
何を言ってるの、ん・・・。
テルセロ軍曹の声に、ポリーヌは広場に目を向ける。
「教会から敵兵が・・・周囲の建物からもっ!」
これでは、クロトが囲まれてしまう。
「何とか救出できんのか」
「無理でしょう、彼は戦車隊と歩兵に囲まれています」
「今行けば、我々も蜂の巣にされちゃいますよ」
テルセロ軍曹とエリック達は冷静に言うが、私はそうはいかん。
が、二人の言う通りだ。
今出ていけば、確実に撃たれ死ぬだけだ。
う~~どうしよう。
悩む、ポリーヌ。
「コレで、ウォーワゴンをぶった切って・・・やるっ!」
『パンッ!』
『ダダダダ』
あ、やっとクロトも気付いた。
多数のゾンビ兵に囲まれたけど、いったいどうする積もりなの。
包囲される、クロトを見たポリーヌは頭に?マークを浮かべる。
「そこまでだ、良くも私をコケにしてくれたな」
あれは・・・。
さっき、胴体を切られた敵の指揮官だわ。
下半身が切れ、臓物が垂れているのに。
まだ動いているわ。
両手を足のように使うとは。
う~~何回見ても、ああ成ったアンデッドの姿はキツいわね。
敵の指揮官である、グロテスクなアンデッドの登場に、ポリーヌは嫌悪の表情を浮かべた。
「パオッ!」
あ・・・像さんも起き上がったわ。
頭がまだ無事なのね。
早く仕留めないと。
リッチの操作する像型のアンデッド化した魔物。
装甲車ロムフェル。
団子虫型戦車ピレンフィーラー。
重戦車AV7。
クロトの後ろの教会を含む建物からは、多数のゾンビ兵士が、ズラリ。
クロト、降伏するしか無いわよ。
クッ・・・捕虜《アンデッド》に成るくらいなら、いっそ私がーー。
等と、ポリーヌは思うが。
(・・・あれ? ・・・)
『ドンッ! ドンッ! ドンッ!』
「ぐわーーーー!?」
「ぐあーーーー!?」
その時、着弾音が広場に轟いた。
( ・・・砲撃? 何処から・・・)
『ドンッ!!』
「ぐぎゃっ!?」
「パオ・・・」
敵の指揮官も、砲撃で消えた。
大象グランド・エレファントも眠りに着いたわ。
ポリーヌは砲声が響く中、窓から外を眺める。
『ドンッ! ドンッ! ドンッ!』
装甲車も、団子虫型戦車ピレンフィーラーも、吹き飛んだわ。
クロト、早く逃げないと巻き込まれちゃうわよ。
ポリーヌは、外に居るクロトを心配する。
「撤退、撤退だぁーーーー!?」
「うわぁ~~~~~~!!」
「逃げろーーーーーー!?」
ゾンビ兵達が総崩れに成って撤退していく。
逃がしはしない・・・って、格好をつけたいけど無理ね。
私達だけじゃ、逆に追われちゃうもん。
砲撃から逃れようと、アタフタする敵をポリーヌは観察する。
「待ちなっ! 今までの乱暴狼藉は許さないわっ!!」
「お前達、覚悟しろっ! 我々が相手になってやるっ!」
え・・・誰かしら、男女の二人組だわ。
女性の方は。
黒いマッシュウルフパーマ。
ヘーゼルカラーの狼のような切れ長の瞳。
丸い犬顔。
忍者のような黒灰色の装束だわ。
武器は、魔皇軍の短機関銃ヘルリーゲルだ。
男性の方は。
鮮やかな金色のストレートヘア。
プルシャンブルーの瞳と、キリッとした眉。
細く整った顔立ち。
黒灰色の魔術師のローブ。
薙刀クーゼ、小型貝殻盾タールフォアバックラー。
彼の薙刀クーゼも、骸骨とかの装飾が無い。
何処かで見た装備って言うか、暗黒騎士だわ。
でも、色とか形状フォルムも違うし。
ポリーヌは、二人を注意深く見る。
「成敗よっ!!」
『バンバンバンバンバンバン』
『ドンッドンッドンッドンッ』
「うぎゃっ!!」
短機関銃ヘルリーゲルを、女性の方が撃った。
「正義の鉄槌を喰らえっ!」
「ぐわわわわわっ!?」
男性の方も、薙刀クーゼから雷撃魔法を無詠唱で放ったわ。
その威力は凄い・・・次々とゾンビ兵が黒焦げに成っていく。
二人のお陰で、ゾンビ兵達が段々と数を減らしているを次々と倒している。
私達もグズグズしている訳には行かない。
今すぐ突撃しなければ。
ポリーヌも窓から飛び出てゆく。
「行くぜーーーーーー!!」
クロトが叫ぶ。
私達も今行くからね。
走る、クロトを目掛けて、ポリーヌは駆け出して行った。
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