「やはり、貴様はっ!」
「いやっ! あんな奴は知らねえっ!!」
女僧侶が俺を睨んでくるが、俺はあんな奴等は知らねぇ~~。
つうか誰だよ、あの二人は・・・。
等と、新たに現れた暗黒騎士たちを見た、クロトは思う。
右の女の方は、全体的に丸みを帯びた黒と蒼色の鎧だ。
デザインは、狼の毛並みのように線がたくさん入っているな。
狼のような耳と口と鬣《たてがみ》の骸骨型兜サヴォイヤード・ヘルム。
額には、一本の蒼白い一角獣の角が生える。
閉じた顎からは、鋭い犬歯が見える。
ほっそりとした括れのある胴。
丸い肩部に、下側のみ丸みを帯びた小さな袖。
腰には、同じミニ・スカート状の青い佩楯《はいだて》を備える。
俺のと同じような鎧だ。
武器は。
左に、黒作大刀クロヅクリノタチの鞘を。
右には、忍刀シノビガタナか。
後、まだ何かあるな。
左の奴は。
全体的に、背が高くガタイは良いし、鎧のデザインは骨のようだ。
色は黒と紫色か・・・。
デーモンの怒り顔をした骸骨型兜サヴォイヤード・ヘルム。
額の左右には、山羊の巻き角が生え。
開かれた口元からは、長い犬歯が見える。
丸みを帯びた長い胴。
丸い肩部。
同じく、丸い佩楯《はいだて》。
武器は。
背中に、刃先の柄が紫色の骨のようなデザインの薙刀クーゼか。
刃の後ろには頭蓋骨が・・・悪趣味なデザインだな。
左腕には、紫色の小型貝殻盾タールフォファーバックラーを着けているぞ。
暗黒騎士たちを見た、クロト。
彼は、二人とも中々強そうだなと思う。
「おっと、ソイツを傷付けようなら容赦はしないよっ!」
「我々の攻撃を喰らいたくは無いだろう? さあ、早くその男を放せっ!!」
女の方が、何か抜いた。
刀じゃないな・・・ありゃ何だ。
筒型の銃か。
男の方は、両手で薙刀クーゼを豪快に振るった。
短機関銃ヘルリーゲルを向ける、女の暗黒騎士。
クーゼを力強く振るう、男の暗黒騎士。
この二人を、クロトは睨む。
「待ってくれ、この男は渡す、だから町中での戦闘は避けたいっ!」
「良いだろう、ソイツだけ置いて町から東へと立ち去れっ!」
アイツ等、もしかして、俺のアンデッド特有の匂いか雰囲気を辿って来たのか。
って、言うか・・・隊長さんよ、俺を引き渡すな。
俺は確かにアンデッドだが。
暗黒騎士《やつら》の仲間じゃないんだよ。
あっちの女の暗黒騎士も黙れよ・・・。
おっと、奴は銃を抜いたか。
フォルムは、骨のデザインだ。
男の暗黒騎士は、クーゼを向けてきたかーー。
何かの魔法を一発射つ気だなぁ。
二人だけか、立った二人だけとは・・・。
この暗黒騎士の二人組は中々の実力者だな。
魔皇軍とか、暗黒騎士とか言ったな。
こいつ等がそうか。
中身の人げ・・・いやいや、アンデッドは精鋭だろうな。
女の暗黒騎士は、要求を受け入れたが、俺は行かんぞ。
どうあってもだ。
この騎士団の連中もそうだが。
訳の分からん暗黒騎士とかとも一緒に行く気はない。
このように、クロトは得体の知れない暗黒騎士たちに着いていく気はなかった。
「勝手な事をっ! 俺は、お前ら何て知らないぜっ!!」
知らねーー連中と行けるかい。
お前らは怪しさ満点だからな。
誰が、一緒に行くかよ。
俺を連れて行きたいのなら、まず正体を晒せ、正体をな。
と考える、クロト。
「なっ! 可笑しいな? 私の鼻が匂いを間違える筈はないんだけど・・・」
「おい、奴は確かに仲間なのか? 間違えたんじゃないだろうな」
女の暗黒騎士が不思議な顔をするがな・・・。
アンデッドで、暗黒騎士なのは正解だ。
しかし、仲間じゃあねぇ~~。
男の暗黒騎士も、疑い始めているな。
間違いじゃあなんだが。
俺は今、はいアンデッド仲間ですなんて言えないんだよ。
そこんとこ、理解してくれな。
なんて考える、クロト。
「おい、もう良いか? 俺は遠い田舎から来たんだ・・・魔王軍だか、魔皇軍だか知らんが妙な事に巻き込まんでくれ」
何度も頭の中で考えるが、確かに俺はアンデッドだ。
だが、魔皇軍でも暗黒騎士でもない。
だから、コイツらに助けて貰う義理はない。
まぁ折角だし、この状況は利用させて貰おうかな。
そうクロトは考えていると。
「はぁ~~? じゃ何で? あんたから私等と同じ匂いがするのよっ!」
「お前からは死人独特の匂いがすると、彼女は言ってたぞ、だからこの町に我々は来たんだ」
「知らん・・・アレかな、アンデッドを倒しまくったから、匂いが染み付いたんじゃないか?」
女の暗黒騎士は俺を責め、男の暗黒騎士の方も俺を問う。
ここは上手く誤魔化そう。
この言い訳なら、騎士団も暗黒騎士とやらも納得するだろう。
そう、クロトは考えたが。
「ななっ! 私達の同族を・・・許さないわっ! これでも喰らえっ!」
「こうなったら、撤退だっ! 雷撃で動けなくしてやるっ!!」
女の暗黒騎士は、丸い玉を三個投げやがった。
男の暗黒騎士は、勢いよくクーゼを振るったぞ。
その瞬間。
「あっ! 避けな? きゃっ!?」
「危ないっ! 邪魔だっ!!」
『ドォンッ! ドンッ!!』
「ぐわぁっ!!」
「うわぁっ!!」
左の屋根から投げられた、二個の丸い玉は周囲で爆発したか。
その内、一つは女騎士の顔に直撃しそうに・・・。
アレは不味い、助けてやらなきゃ。
両腕を縛る縄と騎士達ごと、引っ張ってやるぜ。
クロトは即座に動いた。
「ああっ!?」
「おらっ!」
女騎士の前で、ヘッドシュートを決めてやった。
これで、あの爆弾は空中で爆発するな。
クロトは、ポリーヌの窮地を救ったが。
『ドンッ!!!!』
「ケホッ! ケホッケホッ!」
予想通り、爆弾は空中で爆発四散した。
・・・のは良いが、これは煙玉だな。
クロト以外の周りに居る騎士達は、煙で苦しそうに咳をする。
「ケホッケホッ! ケホッ!!」
「ゴホッ! ゴホッ!!」
見れば、周囲の騎士達も煙を吸い込んだらしいな。
苦しげに咳き込んでいるのが、聞こえてくるぜ。
視界も、灰色の煙で悪くなったな。
俺だけは、アンデッドだから平気なんだがな・・・。
周りを観察する、クロト。
「やるな、だがこれはどうだ?」
俺の活躍振りを見ていた男の暗黒騎士。
奴は、クーゼから強力な紫電《しでん》の雷撃を放つ。
・・・ように、奴のシルエットだけが見えた。
「ぎゃあぁぁぁーー!」
紫色の雷撃が、ポリーヌを直撃した。
雷撃の痛みに耐えられないのか。
側に居た、女騎士も悲鳴を上げて倒れちまった。
平気なのは、俺だけか・・・。
と、アンデッドたる、クロトだけが平気な顔をしていた。
「よし、もう良いわね? 撤退だわっ!」
「さて、逃げるとしようかっ!!」
女の暗黒騎士がトンズラこくと、男の暗黒騎士も何処かに消えていった。
(・・・俺もとっととズラかろう・・・)
騎士団員が、もがいている隙に~~と。
逃げようとした、クロトだったが。
「うぅ・・・」
「あらっ! あっ! ってとっ?」
しまった・・・倒れた女騎士に足を取られて俺まで倒れちまった。
どうしよう。
しかも、顔が近い。
良い匂いがするが、目を覚ます前に体を起こさなーー。
クロトは動こうとしたが、遅かった。
「うぅ・・・ん?」
「やばっ!」
彼女が起きてしまったからだ。
「ん?」
んって、何だよ。
不味い、女騎士の顔が近すぎる。
これは気まずいな。
と思う、クロトだが。
「ちょっ! 近い、近いってのっ!?」
「ぐわっ!?」
な、何だよ、う~~。
気まずいからって、押し倒すな。
ポリーヌから弾き飛ばされた、クロト。
「おい、いきなり押すのはよせ?」
「ご免なさい、せっかく助けてくれたのに」
全く、勘弁してくれ、女騎士さんよ。
煙玉から身を守ってやったのに・・・。
と思う、クロト。
「本当に申し訳ない」
いや、そこまで深く頭を下げんでもいいから。
と、ポリーヌに思う、クロト。
「あ? 別に謝らなくていい」
もしかして、煙玉の事を言っているのか。
別に気にする必要はない。
顔を真っ赤に染めているが、まさか・・・惚れたか。
って、そんな訳無いよな。
まさかと思う、クロト。
「そんな訳にはいかないわ・・・どうやら、貴方はアンデッドじゃないようだし、此方の誤解で拘束した訳だし・・・」
「いいさ、トラブルは何時もの事だしな、それより早く拘束を外してくれ」
やっと信じてくれたか。
これで、縄を解いて貰える。
拘束が終わると思う、クロトだったのだが。
「成りませんっ! 成りませんよ、隊長っ!」
「隊長、彼の素性はまだ明らかになってはいないんです」
「しかし、彼は私を助けてくれたんだぞっ!」
女僧侶よ、まだ俺は信用ないか。
若い騎士、お前も俺を信用しないのか。
まあ、そうだわな。
お前等、そう言う仕事だもんな。
やっと解放されると期待した、クロト。
だが、その希望は二人の騎士から向けられた際国より、見事に砕かれた。
「それは俺も見てました、だからと言って、暗黒騎士と同じ武器を所持している理由は謎だし、直ちに解放するのもな・・・」
「イーサン、お前もか?」
大柄な騎士よ、確かにお前の言う通りだぜ。
何せ、俺と暗黒騎士は同一人物だからな。
まあ、お前ら騎士団が確たる証拠を掴める筈はないがな。
同じなのは顔と武器だけ、身体検査を受けたら流石にヤバイが。
後、荷物の中身である黒玉化させた、黒甲冑《アーマー》もな。
「隊長さん、仕方ないさっ! って言うか、そんなに似ているのか? その暗黒騎士とやらに?」
「顔と背格好はそっくりだ、それに武器もな?」
はぁ~~コイツらしつこいな。
武器だけは誤魔化せないよな。
って言うか。
マントの下に黒玉にした鎧は隠したままだし。
どう誤魔化すかな。
見つかったら、ヤバイしな。
黒玉にした鎧だが、騎士達《やつら》なら黒鎧だと分かるかも知れん。
そうなったら、俺は処刑されるのは必須だ、ヤバイなーー。
と、クロトは思う。
「う~~ぅん、皆の意見は分かったわ・・・やはり、彼には着いて来て貰いましょう」
(・・・うわぁーーマジかよ? 解放するって言ったのに・・・)
これは不味い展開だな。
助けないで早く逃げ出せば良かったぜ。
そう思う、クロトだが後悔しても遅い。
「ただし、任意同行者としてね?」
任意同行者だと。
連行するんじゃないのか?。
いったい、どう言う積もりだ、隊長さんよ・・・。
ポリーヌの意図が分からないクロトは困惑するだけだった。
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