「はぁ~~? さっきの二人には参ったわ」
ポリーヌは、一人ご飯を食べに行こうと、通りを呑気に歩いていた。
(・・・さっきは~~あの二人のせいで考える暇もなかったけど・・・よく考えたらクロトとはお別れね・・・はぁ~~もう少し一緒に居たかったわーー? ・・・)
『グゥ~~~~!!』
クロトとの別れを考えて、寂しがるポリーヌだったが、急に腹の虫が泣いてしまった。
(・・・あーーあと? お腹が~~! ・・・)
レストランにするか、それとも食堂にするか。
朝食を取ったとは言え、昨日は戦いっぱなしだった。
そのせいで、まだ彼女は疲れが取れておらず、朝食も足りなく感じたのだ。
「ああーー? あっ! ちょうど良い所に果物屋さんが・・・」
『ドドーーンッ!!』
リンゴを買って、デザートに頂こうとポリーヌが思った瞬間、背後で轟音が轟く。
そして、ブワッと吹く灰色の煙が彼女の全身を包み込んだ。
『ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!』
「敵の奇襲っ!? なんで、私が腹を空かせている時にっ!!」
いきなり奇襲を仕掛けられた、ポリーヌは空きっ腹を立てて怒鳴る。
「と言うか、パトリス達と合流しなければっ!!」
『ブロロロロッ!』
走り出し、部隊の元に向かうポリーヌ。
そこへ聖光騎士団の兵士を乗せた、ルノー・タクシーが後ろから近づいて来た。
タクシーの座席だけでなく、家根上や両脇にも兵士が乗っている。
そして、この中にはパトリスの姿もあり、彼女は右側の座席脇にある手摺に捕まっている。
「隊長っ! 早く乗って下さいっ! 上からの命令で私達は東側に行きますよっ!」
「分かった、今乗るからなっ!!」
牧杖バクルスを右手に、左手でドアに捕まって背中を此方に向ける、パトリス。
彼女の元に、ポリーヌが急いで駆けつけると、ルノータクシーは減速する。
「乗るなら早く乗ってくれっ!」
「その積もりだっ!」
運転手である兵士が叫ぶと、ポリーヌは右側に立っている、パトリスの後ろに飛び乗った。
「よし、乗ってくれたなっ!」
運転手の兵士は、彼女が乗ったのを確認すると速度を上げて、ルノー・タクシーを走らせる。
「パトリス? エリックやイーサン達は・・・」
「私達より先に出発した装甲車に乗って、東側へ向かいましたっ! テルセロ隊やルキヤン隊もですっ!」
車上で、ポリーヌは隊の仲間たちが何処に行ったのか、パトリスに問い掛ける。
彼女から知らされた情報では、他の偵察隊員たちは既に行動を開始しているとの事だった。
「くっ! よりにもよって、私が隊を離れた時に来るとは・・・」
『ドバッ!!』
ポ呟きつつ険しい顔をするポリーヌだったが、そこへ突如地中から魔物が現れた。
「グゥアアアアッ!?」
石畳を吹き飛ばして現れたのは、岩石魔獣ロック・フットだ。
『キュィーーーー!!』
「きゃあっ!?」
「うわっ!」
「いきなり停めるなよっ!?」
地中から飛び出た魔物の奇襲に、ルノー・タクシーの運転手たる兵士は、直ぐさま車を停めた。
一瞬だけ揺れた車体に必死で捕まる、パトリス。
他の兵士たちも驚きつつ、直ぐに車から飛び降りた。
「魔物のお出ましかっ! パトリス、援護しろっ!!」
腰から拳銃ルビーを抜き取ると、二丁拳銃の構えで発砲しながら、ポリーヌは走り出す。
「隊長、ちょっ!」
「パトリス、他の者も怯むなっ!」
『パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!』
車から飛び降りたばかりのパトリスは、まだ戦うべく心の準備ができていない。
そんな彼女や他の兵士たちより、先に前へと走り出した、ポリーヌ。
彼女の二丁ルビーは、交互に火を吹き、猿人のように立つロック・フットの顔面を攻撃する。
しかし、威力の低い八ミリ弾は大したダメージを与えられず、深く貫通もしない。
「やはり、大した傷には成らないか? しかし、よし来たっ!」
「グオオオオーーーー!!」
『ドンッ! ドガンッ!』
ポリーヌの読み通り、ロック・フットは顔面が傷付けられた事に怒り、彼女を標的に定めた。
次々と、ロック・フットの豪腕からパンチが放たれる。
だが、ポリーヌは怯まずに華麗なステップで横に跳びつつ回避する。
彼女を狙った右腕の一撃は石畳を叩き、左腕から放たれた二撃目は煉瓦壁を崩す。
「これくらいっ! どうって事ないわっ!」
「今だ、一斉射撃っ! 撃てーー!!」
ひたすら攻撃を回避しまくる、ポリーヌ。
その横から、いきなりパトリスの怒号が聞こえた。
『ボッボッボッボッボッボッ!』
『ドドドドドドドドーー』
『パンッ!』
『ドンッ! ドンッ!』
パトリスが、牧杖バクルスの杖先から火炎玉を連射すると、他の兵士たちも銃を撃つ。
ベルティエ小銃、軽機関銃ショーシャ、短機関銃ウィンチェスターSFを撃ちまくる兵士たち。
「グアアアアアアアァァァァ・・・!?」
『バタンッ!!』
複数人の兵士達による、一斉射撃で顔面がボロボロに崩れた、ロック・フット。
奴は、仮初めの生命力を失ったのか、それとも術者のコントロールを失ったのか。
どちらかは分からないが、後ろに力無く倒れてしまい、大きな音と土埃を撒き散らした
「やったわ、やっと倒した・・・はっ! いや、直ぐに東側へ徒歩で向かうっ! ここから先は敵の歩兵部隊や魔物が居るから車両は使えないっ!」
そう叫ぶように命令を下すと、ポリーヌはパトリスと他隊の兵士たちを連れて走り出す。
「隊長、待って下さ~~いっ!」
「急げっ! 東側までは後少しだっ!!」
「分かってるさっ!」
パトリスと兵士達も、ポリーヌを追って街中を走る。
ここには現れなかったが、魔物を突撃させた後から魔皇軍が後続として現れる事もある。
先陣を切った、アンデッド化させた魔物が殺られても、戦力的に痛くはない。
魔物を倒した後に弾薬を消費し、疲弊したままの此方を叩く事が出来るからだ。
「居たぞっ! 聖光騎士団だっ!」
「早く隠れろっ!」
『パンッ!』
『ダダダダッ!』
十字路の右側から現れた、アンデッド兵達はG88小銃や軽機関銃マドセンを撃ってきた。
銃を撃ちまくりつつ、彼等は右側に隠れる。
更には、路上に落ちている様々な障害物の陰に身を隠す者も居た。
砲撃で、破壊された建物の瓦礫や落下してきて横に倒れた、タンスの裏から連中は撃ってくる。
「お前たち、身を隠せっ!!」
「隊長の言う通りだわっ!?」
『パンッ! パンッ! パンッ!』
ポリーヌは、後ろに続くパトリス達に向かって叫びながら左側の方へと走る。
その次いでに、右手の拳銃ルビーを乱射しながら敵を牽制しつつ路地に身を隠した。
「敵はーー?」
(・・・左側の十字路を曲がった先に多数? 小さな瓦礫の裏に伏せているのが一人? タンスの裏には二人・・・)
敵の正確な位置と人数を把握しようと、ポリーヌは少しだけ壁から顔を出す。
『ダダダダダダダダッ!』
『パンッ!!』
『ドドドドドドーー』
『パン、パン、パン』
右側の十字路からは軽機関銃マドセンが、瓦礫の後ろからはG88小銃が撃ってくる。
タンスの裏からは、短機関銃ベルグマンと拳銃ルガーを持った兵士が撃ってくる。
『ドドドドッ!』
『パンッ!』
『ボボボボッ!!』
パトリス達も、左右の建物の入り口や窓から撃ち返している。
(・・・ルビーじゃ応戦は出来ても狙い撃ちわねーー? ここは魔導連発小銃マジック・ルベルで・・・)
敵と味方の状態を見て、ポリーヌは行動に移る。
撃ち返すには確かに、拳銃ルビーの方が乱射できるので良いだろう。
しかし、狙い撃ちなら魔導連発小銃マジック・ルベルの方が効果的な武器だ。
なので、ポリーヌは密かに裏口から建物に入って行く。
(・・・二階や三階からなら楽に狙えるわ・・・)
そう考えた、ポリーヌは一人で隠密行動を取るのであった。
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