よし、今すぐクロトを助けに行こう。
とした、ポリーヌだったが。
『バンバンッ! バンバンバンバンッ!』
『ガラララッ!』
激しい銃撃と雷撃だわ。
あの二人は誰だろう。
いけない、今は考えるより外に出なければ。
窓から出て。
と、ポリーヌは建物から一気に飛び出る。
「突撃だっ! エリック、テルセロ、着いてこいっ!!」
クロトや二人だけに任せる訳には行かない。
奴等を追い掛けなければ。
素早く、拳銃ルビーを抜き取り、二丁拳銃スタイルで走る、ポリーヌ。
「あっ! 隊長っ!!」
「ペペ、援護を頼む」
「合点承知の助っ!」
エリック、テルセロ軍曹の声が聞こえたわ。
最後のは、機械鎧アイアン・ゴーレムの操縦者の声だろう。
背後から走って来る、味方の声を聞いて、ポリーヌは更に走る速度を上げる。
「貴様ら、アンデッドは一人も逃がさんっ!」
『ドンッ! ドンッ! ドンッ!』
走りながら、二丁拳銃で殲滅してやる。
滅茶苦茶に乱射する、ポリーヌの攻撃だが、逃げる魔皇軍に対しては有効だった。
何故なら、弾が当たらずとも逃げる連中に圧力と混乱を与えたからだ。
「突撃ーーーーーー!?」
「うおおおおぉぉーーーーーー!?」
誰だ、ルキヤン・・・それと、パトリスとイーサン達か。
三人も走りながら、射撃している。
ルータの小型装甲車フォードFTーBも見えるな。
後、左側からは彼等以外にも・・・。
鉄帽アドリアン・ヘルメット、コート型の軍服。
あの大勢の空鼠色の兵士達は、援軍ね。
彼等は、短機関銃ウィンチュスターSFを射ちながら。
或いは、小銃ベルティエの端に銃剣を付けて突撃している。
彼等の後ろには、灰色と鼠色の機甲部隊が続く。
三台の半円形の玉を、二つ左右に載っけた、豆戦車ルノーUE。
この三台は、キャタピラの着いた荷台を引いている。
そして、荷台の中では、飛蝗型投射弩ソートレルを射つ兵士と、爆弾を装填する兵士が居る。
砲撃は彼等が行ったんだわ。
四角い白鼠色と灰色の迷彩塗装された、車体。
船の舳先《へさき》のように角張った、正面装甲。
75ミリ榴弾砲を右側に、一門
重機関銃オチキスを左右に、二丁。
これ等を装備した、中戦車シュナイダー。
小さな車体。
お饅頭《まんじゅう》型の砲塔。
小型半自動砲ピュトー SAを備えた、軽戦車ルノーFT。
と、ポリーヌの目には味方の増援として現れた、聖光騎士団の歩兵部隊と機甲部隊が映る。
「ポリーヌ隊長、我々は町の左側から侵入しましたが、味方の別動隊と合流したので、砲撃で援護を要請しましたっ!」
「分かった、ルキヤン、このまま奴等を追撃するぞっ!」
機甲部隊は、別の町から援軍に来ていたのね。
助かったわ。
背後から近づいてきた、ルキヤンの報告を聞いた、ポリーヌ。
その報せを聞いて、大勢の味方と共に彼女は敵を殲滅せんと突撃し続ける。
「おらよっ! そらっ! 喰らえっ!」
近くに行くと、クロトの声が聞こえてくるわ。
彼は容赦なく、ゾンビ兵に斬りかかる。
長い刀でゾンビ兵の首を跳ね、他のゾンビ兵の胴を跳ねる。
三人目は頭から真っ二つだ。
彼が進むにつれて、ゾンビ兵の数が減る。
黒いヘルメットが宙を舞う。
胴と下半身が別々に落ちる。
真っ二つにされた、ゾンビ兵が地面に転がる。
うぅ・・・余り見たくない光景ね。
酷い有り様だわ。
クロト以外にも、上に居る二人の攻撃も容赦がない。
疾走し続けていた、ポリーヌだったが彼女はクロト達の方に目を向ける。
「あがっ!?」
「ぎゃっ!?」
短機関銃ヘルリーゲルとは。
左右左右と言う具合に銃撃を続け、交互にゾンビ兵を撃ち殺していく。
彼女の射撃は、本当に情け容赦ない。
「ぎがゃゃゃゃっ!?」
男性の方は、まるで暗雲から降り注ぐ落雷を放っているようだわ。
当たった、ゾンビ兵は全員が漏れなく感電死。
「ぐわっ!」
「があっ!」
「クロト、援軍だっ!」
やった、二人のゾンビ兵に私の弾が当たった。
クロト、追い付いたわよ。
建物に向かうゾンビ兵は、前からの激しい銃撃と雷撃魔法に倒れる。
他にも、彼等の背後からは弾が飛んでくる。
建物に逃げ込んだ運の良い者も、後ろからの矢が壁を貫通して、体を貫かれる。
これで、終わりね。
ポリーヌたち聖光騎士団の銃撃と前方からの攻撃で、魔皇軍は挟み撃ちにされてしまった。
「終わったか? 後は掃討戦だ・・・クロト、気を付けろよ」
「ああ、でも、その前に・・・」
周囲を警戒しなければ、他の兵士達も、忙しなく走っているし。
それに、まだ逃げ遅れた残敵が居るかも知れないからね。
戦いが終わったとしても、呑気に気を抜いてはいられない
ポリーヌは、辺りに目を向けつつ敵兵士が残って居ないかと探す。
「よっとっ? 兵隊さん、ご苦労様です」
「この町を助けて頂き、誠に感謝致します」
あの女性と男性が、教会から飛び降りてきた。
「貴方達は冒険者って感じかしら? ご協力感謝するわ・・・私はポリーヌ・ル・リッシュ少尉、聖光騎士団所属よ」
まずは、私が挨拶しないと。
それで、貴方達は誰なのかしら。
ポリーヌは、目の前に居る二人に丁寧に挨拶したが。
「旅の商人シノブ・ヴォルフ・ベーアと申します、私達は冒険者と傭兵稼業を兼ねてまして・・・」
「同じく、旅の学者リーヌス・エーレンフリートと申します・・・彼女の言う通り、私共は旅から旅へと各地を放浪しての商人と学者として、商売と研究を行っている次第です」
冒険者と傭兵をやりながら、商人と学者として旅をしているのね。
学者のリッターが薬を作り、商人のシノブが薬を売って生活をしている訳ね。
話を聞いて、ポリーヌは二人の職業をアレコレと考えた。
「なるほど、それで立ち寄った町で魔皇軍と戦闘を・・・と言う訳ですね」
「はい、居合わせた町に魔皇軍が襲来したので、我々も自警団に加勢したのですが・・・」
「我々を含む、自警団員や冒険者、傭兵の戦力が足りず、やむ終えず避難民を連れて東に退避しておりました」
そう言う事ね。
シノブとリッターさん。
避難民を安全圏に避難させ、再び町に戻って来た。
どうやら、二人は嘘を言っている訳じゃなさそうね。
ポリーヌは、二人の言った事を信用した。
「避難民はどうしたんだ?」
「彼等も町に平和が戻ったので、時期に来るでしょう」
「それなら、後で私達が呼びに行きますので心配なさらず」
クロト、そうね。
避難民は何処に・・・。
ああ、シノブとリッターの言う通り、時期に来るわね。
と、ポリーヌは思った。
「そちらの方は?」
「彼は・・・見習い騎士のような物です」
シノブさん。
やっぱり、気になるわよね。
クロトは、私達と同じ服装じゃないからね。
ポリーヌは、クロトの黒い服装は目立つと考えた。
「クロト・プルーセンだ、宜しくな」
「宜しくお願いします」
「此方《こちら》こそ」
クロトに、二人は挨拶したわね。
握手する三人の様子をみる、ポリーヌ。
「それでは、我々は避難民を呼びに行くので」
「これにて、失礼させて頂きます」
避難民の場所に行くのなら、別に構わないわ。
頭を下げて踵を返した、シノブとリーヌス達を、ポリーヌは見送る。
「あっ! 待ってくれ・・・少し時間をくれないか?」
「はあ? まあ宜しいですけど」
「少しの間だけですよ、我々も避難民を連れて来なければ成らないので」
クロト、何で二人を止めるの。
二人の邪魔をしたらダメでしょう。
クロトは、シノブとリーヌス達に何か話しでもあるのかと、ポリーヌは思う。
「クロト、我々から余り離れて貰っては困るのだが・・・」
「あ、ああ、そうだな・・・済まない、やはり話はしなくて良い・・・」
クロト、今は一応、私の監視下なのよ。
勝手な真似はダメ。
ポリーヌは、クロトを止めた。
「そうですか・・・では、これにて」
「我々は今度こそ、失礼させて頂く」
シノブとリッター達は行ってしまった。
「彼等は行ってしまったわね? 私は戦車隊の隊長と話してくるから、貴方は待機しててね?」
「分かった・・・」
クロト、行くからね。
さあ~~て、戦車隊の指揮官は何処かな。
と、ポリーヌはクロトと別れて行ってしまった。
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