【~~最強のアンデッドと化した元英雄~~】 暗黒騎士《魔王》として女聖騎士(勇者)と対決・・・するはずが・・・? えっ! 悪堕ちっ!? (;´゜д゜`)❗❕

ノートリンデン防衛戦
デブにゃーちゃん
デブにゃーちゃん

暗黒騎士の元に火達磨がーー!!

公開日時: 2021年11月7日(日) 12:20
文字数:3,124

「そこに居るのは分かっているっ! 隠れてないで出てこいっ!」


「あらら、見つかってたのかーー?」


 リッチが指揮棒タクトを向けた先には、クロトが居る。



『バタンッ!』


「死ねっ! 人間めっ!!」


「殺すっ! 動くなよっ!」


 魔皇軍のグール兵とワーウルフ兵が、屋上のドアを勢いよく開いて出てきた。

 怒鳴る彼等は、二人とも短機関銃ベルグマンをクロトに向けた。



「アレッ? 貴方様は・・・」


「はっ! 失礼しましたっ!」


 グール兵とワーウルフ兵たちは、クロトの前で銃を下げつつ、ビシっと敬礼する。


 それもその筈だ、何故なら今のクロトの姿は暗黒騎士だからだ。



「うむ、ご苦労っ! 早速だが指揮官の所まで案内してくれっ!」


(・・・全滅させるだけなら簡単だっ! だが敵の数は多いっ! なら指揮官を殺ってから烏合の衆と化したコイツらを皆殺しにしてやるぜっ!! ・・・)


 不意を突いて、敵の親玉に一撃を喰らわせ、指揮系統を混乱させてから一気に殲滅する。


 それが、クロトの考えた筋書きであり、敵の意表を突くべく立てられた戦術だ。



(・・・一応は俺も暗黒騎士だ? 雰囲気とかではまずバレ無いだろう? と~~思うが・・・)


 クロトは魔皇軍の所属では無い。

 ただ、本当にアンデッドであり暗黒騎士の一人であるのは間違いない。


 だが、いつ正体がバレるのかは彼にも分からない。



(・・・別にバレたからと言っても何の問題も無いんだけどな・・・)


 正体が知られたのならば、その時は近くの兵士たちから斬り捨てれば良い。

 クロトは、ボンヤリと考えながら二人のアンデッド兵達に近づいていった。



 その頃、銀行の前では。



「遅いな、奇襲に向かわせた二人は殺られたのか・・・ん? アレはーー❗️」


 隊長リッチは、銀行の入り口から裏口へと回り込ませた部下達が出てくるのを見た。

 後方から向かった二人が、屋上に居た敵を仕留めたのかと思った。


 が、しかし当の部下達は重要人物を連れてきたのだ。


 驚かない筈はない。



「貴方様は?」


「視察に来たんだよ、視察にな?」


 隊長リッチは、驚きつつも質問をしてきたので、クロトは適当に答えた。

 勿論、それらしく偉そうな堂々とした態度でだ。



「わ、分かりました・・・では、此方に」


「いや、それよりも?」


 案内しようとする隊長リッチの誘いを断る、クロト。


 何故なら、そこに魔皇軍の歩兵部隊が捕虜を連行してきたからだ。

 銀行前の石畳道路をゾロゾロと列をなして、右から歩いてきた、アンデッド部隊と捕虜たち。



「隊長、民間人を連れてきました」


「合計、十名です」


 先頭を歩くスケルトン兵とゾンビ兵たちは、隊長リッチに報告する。


 長い列の最後尾では、銃剣を付けたG88小銃を構えたヴァンパイア兵とグール兵が居た。



「そうか、そうか・・・丁度言い時に連れてきたなっ! どうですか、暗黒騎士殿? 彼等を召し上がっては如何でしょうかっ!!」


「え? ああ~~まあ、頂くか?」


 スケルトン顔を向けてきた隊長リッチの言葉に、クロトは困惑する。



(・・・いや? 食えって事かよっ! 人肉なんて絶対に無理だわ・・・)


 人間の肉を食べたり、血液を啜《すす》るのは、アンデッドに取って当たり前だ。

 また、洗脳やアンデッド化と言った邪悪な魔法の行使も当然だ。


 しかし、クロトは人間の肉を勿論だが食べたことが無い。

 また、血液の方もアンデッド化したとは言え、別に欲しいとは思わない。



「さて・・・どうすっかな?」


「ひぃぃーーーー!!」


「来ないでぇ~~!?」


 クロトは人間達を眺める。

 列に並ぶ老若男女の中には、子供まで居る。

 


「うるさいっ! 黙らないと撃ち殺すぞっ!」


「喧しい奴等だっ! 銃剣で刺そうかっ!!」


「ひっ!?」


「ぐ・・・」


 列の最後尾に並ぶ、ヴァンパイア兵とグール兵たちが怒鳴る。

 捕虜にされた民間人、なす術の無い彼等は二人の威圧に負けて黙ってしまう。



(・・・うわ~~? コイツは不味い状況だぜーー!! どうにかして助けてやらんとダメだが? 今の俺が下手に動けば巻き添えにしちまう? 巻き添え覚悟で・・・いやいや別の方法を考えないと・・・)


 民間人を前にして悩む、クロト。

 敵を殲滅するのは容易い、だが一般市民が死んでしまうかも知れないのだ。


 それは、何としても避けたい。

 強引に戦いを始め、多少の犠牲も厭《いと》わず敵を倒す。


 この方法もあるが、できれば最後の手段にしようと、クロトは思う。



(・・・指揮官さえ殺っち舞えば簡単に殲滅できると思ったが厄介なことに成ったな・・・)

 

「暗黒騎士殿?」


 悩み続けつつ両腕を組む、クロト。

 ボケっと、暗黒騎士が何を考えているのだろうかと、隊長リッチは声を掛けた。



「ん、ああ・・・頂くとしようかっ?」


(・・・やべーーなっ! ここで受け取らなきゃ不審に思われるぞ・・・)


 どうにかして、誤魔化そうと考えている、クロト。



「ふむ? おいっ! 捕虜を連れてこいっ!」


「はいっ!!」


「了解っ!!」


 隊長リッチは、部下に命令して人間達をクロトの元へ連れてこさせる。

 列に並んだ、民間人の中からアンデッド兵たちは、幼い女の子を連れてくる。



「嫌だよーーーー!!」


(・・・仕方ない? 血を吸う真似をして何とか誤魔化すしか手はないか・・・)


 ギャン泣きする女の子を連行してくる、スケルトン兵とゾンビ兵達。

 泣きわめく彼女を前に、クロトは血さえ吸えば今は安全だ。


 そう思いながらも、どうやって周囲の魔皇軍を倒すか考える。


 やがて、そんな彼の元に女の子が連れて来られた。



「さあ、あの少女を・・・」


「やだあ~~~~❗️」


 リッチは右手を、泣きじゃくる女の子に向ける。



「コラッ! 動くんじゃないっ!」


「暗黒騎士さまを前にして、何たる不敬をっ!」


「お黙りっ!!」


 両側から女の子の腕を掴んで連行する、スケルトン兵とゾンビ兵たちは、彼女を大声で叱る。


 その後ろから、アンデッド化された女も鋭い視線で女の子を睨みつつ怒鳴る。



「暗黒騎士さま、召し上がって下され」


(・・・可哀想に・・・まあ殺しはしないから安心しろっ! ・・・)


「ああ、頂きますっ! んんっ?」


 隊長リッチから供物として差し出された、女の子の腕を噛んで見ようかと、クロトは思う。


 しかし、クロトは何か妙な気配を感じて左側の建物に目を向けた。

 通りに並ぶ、そこから騒々しいような物音が聞こえた気がしたのだ。



「何か、妙だな・・・」


「暗黒騎士さま?」


 町内は、銃声が鳴り響く戦場と化している。

 と言う訳で、時おり遠くから戦闘音が聞こえるのは当然だ。


 だが、クロトの耳は確かに近くの建物から不審な物音を察知したのだ。

 その音が聞こえた建物に近づく、彼の後を隊長リッチが続く。



『バタンッ! ドドドドッ! ボワーーーー!』


「っ!?」


 建物から行きなり転がりながら出てきた、火達磨の人物。

 かろうじて、この人物は女性騎士に見えるのだが、何処の誰かは分からない。


 クロトは、突然の予期せぬ乱入者に驚いた。

 それは、周囲に居た魔皇軍のアンデッド兵や捕虜にされた民間人も同じだろう。



『ゲフッ! ゲフッ! ケホ?」


(・・・苦しそうだ? 止めを刺してやるか・・・)

 

 やがて、炎が消え失せると、謎の女性騎士は、真っ黒焦げで所々が赤黒い焼死体と化す。

 クロトは、哀れな彼女を楽にするべく腰の大太刀オオタチに手を伸ばした。



「可哀想に、まだ若いってのによ?」


(・・・今楽にしてやるからな? 待っていろ・・・)


 ゆっくりと近づく、クロトであるが傍らに近づいた時、もう既に女性騎士は息絶えていた。



「いや、死んだか? なら、刀を抜く必要は無しだな」


「・・・ほほぉ~~? 暗黒騎士さまは、幼女より若い生娘が、ご所望に御座いましたかっ!」


 抜き出そうとした刀の刃を再びしまう、クロト。

 そんな彼の背後では、隊長リッチが五月蝿く騒ぎだす。

 

 どうやら、奴はクロトが女性騎士をアンデッド化しようと考えたと勘違いしたのだ。

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