最近自然に触れていないなあと、ふと思い立って自転車を漕いだ。
五山送り火の船形の近くの山道を歩くことにした。

近くにある沼（これがかなり大きくて、ゴルフコースの池に使われているみたいです）のほとりに自転車を止めて、
それに沿って歩いていくと、少しずつコンクリートから土の道に変わっていった。

前日に雨が降ったからか、僕が足を下ろすたびに、
土の地面はぐじゅぐじゅと音を立てる。

こんな日に歩きにくるんじゃないよと言われたようで、すまんと思う。
途中までは、家だのトラックだの、人工的なものがまばらにあったのだけれど、

いつの間にやら杉の木が整然と並ぶ中に立たされていた。
息を吸い込むと自然を強く感じた。僕はこの感じが好きなのだ。

鳥の声がかすかに遠くの方で聞こえたけれど、すぐにしんとなった。
ここで何者かに襲われたら、どうやって逃げ出そうかと僕は想像した。

猿か、熊か、猪か。もしかすると人かも知れないけれど、
それよりも彼らの方がよっぽど恐ろしかった。

急に左右の斜面から飛びかかってくることを考えたら、緊張した。
足元でなる木葉の音が聞こえるたびに、もう少し静かにしてくれと思った。

今も隠れて見ているのかも知れない。
熊に立ち向かって果たして勝てるのだろうか。

僕は貧相なからだを少し叩いた。
鍛えた方がいいのかしらん。

そのまま奥へ奥へと進んでいくと、少し開けたところに出た。
いかにも清そうな水が流れて、周りには前日の雨を一身に受けた苔が輝いていた。

その場にあった岩に少しお邪魔して腰掛け、ぼうとした時間を過ごした。
ぼうと過ごして一日が終わってしまうことに焦り慌てる日と、そうでない日との違いは一体なんだろう。

充足か、意思に沿ったことをしているかどうかであろうか。
焦っている時のあの不快な心持ちは、いまだに良いものとは言えない。

いつの日かあの子も、ころころ可愛がることができるのかしら。

しばらくして僕は元来た道をゆっくりと戻った。
帰り道の方が、行きしよりもひらけて見える。

全身に自然を蓄えようと呼吸を深くしながら、少し坂になった道を揚々と歩いた。
次は、誰かと一緒に来ようかな。