「壱成に魔法の杖を返してあげてください」
「なぜ?」
林太郎の言葉に菫が問いかけると林太郎が口を開いた。
「壱成が俺に恋してたこと知ってました、知ってて俺は油断し身体を奪われましただから壱成は悪くない、壱成の魔法の杖を返してあげてください」
「それで本当に良いのか?」
「はい、俺が1年間の禁止を受けます」
そう言って林太郎が魔法の杖を差し出すと菫はその魔法の杖を受け取り壱成の魔法の杖を林太郎に渡した。
「林太郎から返してあげて」
「わかりました」
返事をしお辞儀をすると林太郎は菫の家を出ていき壱成の家に向かった。
ー壱成の家ー
菫に禁止を言われ壱成が落ち込んでいるとドアをノックする音がした。
壱成はドアに近づき開くと林太郎に驚いた。
「林太郎!」
「これを渡しに来たんだ」
そう言って林太郎が魔法の杖を差し出すと壱成は驚いた顔で見つめた。
「俺の魔法の杖、菫様に渡したはずなのに何でお前が持ってんだ」
「頼んで返してもらったんだ」
そう言って壱成に魔法の杖を渡すと林太郎は背を向けた。
「林太郎」
「お前が俺にしたこと忘れてやるから俺に恋心を抱くな」
「林太郎、俺は」
「俺にとって壱成は大事な仲間」
そう言って林太郎は振り向かずそのまま歩きだし壱成の家から離れていった。
「大事な仲間か」
そう言って笑みを浮かべると壱成はドアを閉めた。
「……」
無言で家に向かって林太郎が歩いていると髪と足首まで長い服とマントが銀色の魔法使いの凛(りん)が現れた。
「林太郎」
「凛!どうしてここに」
「壱成の魔法の杖を返してもらい自分の魔法の杖を差し出したんだって」
「菫様に聞いたのか」
「悪いのは壱成なのに優しすぎるだろ」
「俺が良いんだから良いんだ」
「林太郎」
歩き出す林太郎の手首を凛が掴むと林太郎が口を開いた。
「まだ何かあるのか」
「告白したのか?」
「告白って何の?」
「菫のこと好きだって」
「何で凛が知ってんだよ」
「お前の兄だぞ、お前のことは何でもわかる」
「魔法使い同士の恋愛は禁止だって知ってるだろ」
「お前の知らないことを教えてやる」
そう言って凛は林太郎の耳元で囁いた。
その囁きに林太郎は驚いた顔で凛を見つめた。
「だから告白しても良いんだぞ」
そう言って凛が離れていくと林太郎は自分の家に行かず菫の家に向かった。
ー菫の家ー
窓際に立って外を見つめているとドアをノックする音がした。
「入りなさい」
窓際から菫が返事をするとドアが開き林太郎が入ってきた。
菫が驚いた顔で「林太郎」と口にすると林太郎はドアを閉め菫に近づいた。
「壱成に魔法の杖を渡して家に向かってたんですが菫様に話があって来ました」
「話って何ですか?」
「普通の魔法使い同士の恋愛は禁止だけど先輩との恋愛は禁止じゃないんですよね」
「なぜそれを…凛か」
「我慢していたことを言います」
「……」
「俺は菫様のことが好きです、俺と付き合ってください」
「……」
突然の林太郎の告白に菫は驚き言葉を失った。
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