乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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162話 闇魔法

公開日時: 2023年1月23日(月) 10:36
文字数:662

 イザベラが杖を取り出した。

 彼女の魔力に反応してか、先端の赤い宝石が輝き出す。

 闇の瘴気に汚染されてからのイザベラは、闇属性の魔法を得意としている。


「【影縫い】」


 イザベラの放った魔法により、アリシアの身体の自由は奪われた。


「うっ……なに、これ……!?」


「闇魔法の一種よ。対象の動きを止めることができるの。これであなたの動きを封じたわけ」


「そ、そんな……」


「ふふん、いい気味だわ。あなたにはお仕置きが必要よね……。たっぷりと可愛がってあげるから覚悟なさい!!」


 イザベラはアリシアに迫る。

 その様子を、一人の男子生徒が物陰から見ていた。

 フレッドだ。

 彼は愛しい姉の暴走を止めるのだろうか?

 否、止めることはない。

 では逆に、愛しい姉の暴走に加担するのだろうか?

 それも否である。

 彼の思惑は、別にある。


(全ては予定通り……。あの女の演技も上々か……。後は役者を揃えるだけだ)


 彼は邪悪な笑みを浮かべる。

 アリシアとフレッドは、共通の目的のために結託していた。

 イザベラとエドワード王子の婚約を何とかして破棄させるという目的である。


(ごめんなさい、姉上。でも、これしかないんです。僕と姉上が結ばれるためには……)


 イザベラとフレッドは義理の姉弟だが、直接の血縁関係はない。

 結婚は可能だ。

 ただし義理の姉弟であることも事実。

 貴族界において、義理の姉弟での婚姻などほとんど前例がない。

 彼が愛しい姉と結婚するためには、強引な手段を用いるしかないのだ。

 彼は気配を消したまま、イザベラとアリシアの様子を見守る。

 ちょうど、イザベラがアリシアを平手打ちしたところだった。

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