フレッドとアリシアさんが闇魔法の詠唱を進めている。
闇魔法は、単純な物理的破壊力に加え、精神混乱や精神汚染などの追加効果も持っている。
こんな秋祭りのど真ん中でぶつかり合えば、一般人にも被害が出る可能性がある。
いや、一般人はいつの間にか避難しているからまだいい。
問題は、この広場内にいる者達。
私、アリシアさん、フレッド。
それに、少し離れたところに倒れているエドワード殿下、カイン、オスカーだ。
「イザベラさんは黙ってみていてください! この異常な同性愛者の魔の手から、イザベラさんを守るのは僕の役目です!!」
「イザベラ様はわたしが守る! たとえ死んでも、お前なんかにイザベラ様を傷つけさせたりしない!!」
「僕たちの愛を邪魔する奴は、誰であろうと許さないぞ!!」
「わたしたちの間に割り込もうとする奴は、みんなみんな消えてしまええぇっ!!」
私の言葉は全く聞き入れてもらえなかった。
二人はお互いに睨み合いながら、闇魔法を練り上げていく。
その光景には、思わず息を飲んでしまう。
「いくぜ! これが僕の闇魔法……」
「わたしの闇の力を思い知りなさい!」
二人が両手をそれぞれ相手に向ける。
「闇よ、全てを薙ぎ払え! 【ダークネス・デストラクション】!!」
「闇よ、全てを飲み込め! 【ブラックホール】!!」
二人の魔法が炸裂した。
真っ黒な波動と、黒い渦がぶつかり合って、周囲を巻き込み大爆発を引き起こす。
それは周囲に凄まじい衝撃を発生させた。
「きゃああっ!?」
私は咄嵯に防御魔法を展開する。
少し離れたところにいるエドワード殿下、カイン、オスカーは……。
もう防御魔法を発動する余力すらなさそうだ。
物理的なダメージは届いていないけれど、二人から溢れ出た闇の瘴気が……。
「…………」
辺り一帯に土煙が立ち込める。
やがて視界が晴れると、そこには倒れ伏すフレッドとアリシアの姿があった。
「アリシアさん! フレッド!!」
私は慌てて駆け寄ろうとする。
でも――
「「来ないでください!!」」
二人が声を合わせて叫ぶ。
「……どうして?」
私は足を止める。
すると、二人はよろめきながらも立ち上がったのだった。
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