乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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125話 ”お姉ちゃん”と”親友”

公開日時: 2022年9月22日(木) 09:09
文字数:1,100

 私はフレッドの説得に成功した。


「フレッド、少しそこで大人しく待っていてね」


「…………なぜ?」


「自分では気付いていないかもしれないけれど、あなたには闇の瘴気が取り憑いているの。このままだと大変なことになるわ。私なんかの光魔法じゃ祓いきれないから、アリシアさんを説得して、闇の瘴気を祓ってもらう必要があるのよ」


「……これが闇の瘴気? 抑圧されていた感情を増幅させるという、あの……」


「私も詳しくは知らないけれど。とにかく、大人しくしておいてね。あまり”お姉ちゃん”を困らせないでちょうだい」


「…………」


 フレッドは私の言う通りにしてくれた。

 私はフレッドをその場に残し、再びアリシアさんの方に向かう。

 しかし、すぐに立ち止まることになった。

 なぜなら、アリシアさんの方からこちらに歩いてきていたからだ。


「イザベラ様、フレッドさんとのお話は終わりましたか?」


「え、ええ、終わったわ」


 なんだろう?

 さっきよりも、アリシアさんから立ち上る闇の瘴気が増しているような……。

 私がフレッドと話しているこのわずかな時間で、いったい何があったのかしら?

 私はアリシアさんの表情を確認する。

 笑顔だ。

 でも、目が笑っていない。

 口元だけ弧を描いている感じだ。

 ……あれっ!?

 よく見ると、アリシアさんの目の下に隈ができていて、顔色も悪い!

 どう見ても普通じゃない。


「アリシアさん、どうかしたの? 体調が悪そうだけれど……」


「いえ、大丈夫です」


 アリシアさんはにっこりと微笑む。

 その様子は、一見するととても可愛らしく見える。

 だけど、アリシアさんが纏っている闇が、その印象を台無しにしていた。

 これは、やっぱりアリシアさんを何とかしないとダメだわ。

 私は決意を固める。


「アリシアさん、あなたには闇の瘴気に取り憑かれているわ。だから、今すぐ浄化してほしいの」


 私はストレートに要求を伝えた。


「闇の瘴気……?」


「ええ。その人が持つ負の感情や抑圧されていた思いを、増幅させてしまうらしいわ。この状態が続くと、アリシアさんの心が崩壊しかねないわ」


「抑圧されていた思い……」


 アリシアさんはうつろな目をしている。


「アリシアさん、お願い。あなた自身の光魔法で、あなたの中の闇を祓ってほしいのよ」


「……」


 アリシアさんは黙ったままだ。

 反応がない。

 聞こえていないのかしら?

 私はもう一度、アリシアさんに話しかける。


「ねえ、アリシアさん。”親友”としてあなたのことがとても心配なの。お願いよ、正気に戻っ……きゃあっ!」


 突然、アリシアさんが飛びかかってきた。

 私は慌てて避けようとする。

 だが、アリシアさんの方が動きが早かったようだ。

 私はアリシアさんに押し倒される形になってしまったのだった。

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