「イザベラさんがこの魔獣を討伐したらしいぞ!」
「さすが、昨年度の主席合格者だ!」
「二年生になった今も、ずっと成績トップを独走してるだけあるわね」
「カッコイイー!!」
生徒たちが口々に褒め称える。
ちょっと待て。
どうしてそうなった?
私は慌てて否定しようとする。
だが、それよりも先に、オスカーが話を続けた。
「私は魔獣の動きを止めるために氷魔法を使いました。ですが、それだけでは討伐には不十分。イザベラ殿は、魔獣を倒すための追加攻撃を行いました。それがこれです」
そう言って、彼は魔獣の頭部を指し示した。
いや、正確に言えば頭があった場所か。
魔獣の首から上には何もない。
私が切り飛ばしたからだ。
「「うおぉぉぉっ!!!」」
盛り上がる一同。
「まさか……首を吹き飛ばすほどの剣技をお持ちだとは……」
「あの細腕からは想像できない力だな」
「あんな華奢な身体のどこに、それほどの力が秘められているのかしら……」
何故そんなにあっさり信じるのか。
もっと疑ってくれてもいいんだよ?
「イザベラ殿の一撃は見事でした。首を一太刀ではねる。まるで聖女のような慈悲深さを感じさせられました」
オスカーが爽やかな笑みを浮かべながら、そんなことを言う。
何だそれは?
私はただ、無我夢中で剣を振るっていただけだ。
そこに聖性など欠片もない。
オスカーは私を持ち上げ過ぎだ。
やめてくれ。
恥ずかしくて穴があったら入りたい気分になる。
「イザベラさん、凄いですわね」
「最高です……」
「イザベラ様、抱いてぇ……」
女子生徒達の黄色い声援が聞こえる。
おいコラ、最後のヤツ。
お前は後で説教だからな。
私を一体なんだと思っているのか。
もうダメだ。
早く何とかしないと……。
「オスカー様は大げさですわ。私はトドメを刺しただけ。その前の、オスカー様の氷魔法による拘束が完璧だったので、スムーズにトドメを刺せたんです。それに、アリシアさんの光魔法によるサポートも素晴らしいものでした。お二人がいなければ、魔獣を倒すことはできなかったでしょう」
私は冷静に分析し、オスカーとアリシアさんに手柄を押し付ける発言をする。
「イザベラ殿……」
「イザベラ様ぁ……」
オスカーとアリシアは感動に打ち震えている様子である。
よし、これでどうにかなったはずだ。
魔獣を率先して討伐したなんて広まったら、淑女としてマズイからね。
私の名誉は守られた。
一件落着である。
……一件落着だよね?
オスカーとアリシアさん、頼むからこれ以上余計なこと言わないでくれよ。
私は心の内で祈るような気持ちになっていたのだった。
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