私はカインに『ファースト・キッス・ヒール』を使用したけれど、実はそれはセカンドキスだった。
黙っていれば良かったのに、私はうっかり口を滑らせてしまう。
「ど、どういうことだよ! イザベラ嬢!!」
私とファーストキスをしたと思ったら、実はセカンドキスだったと言われたカイン。
困惑している様子だ。
「ふ、ふざけるなぁ! どこのどいつだ、俺のイザベラを誑かしたのは!」
「イザベラ殿に限ってそのようなことは……。おそらく、不埒な輩に襲われてしまったのでしょう!」
私とカインのキスに動揺しつつも、治療行為だったとしてスルーに努めたエドワード殿下とオスカー。
そこに追い打ちを受け、動揺が極まっている。
「僕だけのイザベラさんだったのに……。許すまじ……」
静かながらも、闇の瘴気が増大しているフレッド。
場はシッチャカメッチャカだ。
「み、みなさま、どうか落ち着いてください。私の話を聞いてくださ――」
「イザベラ様」
必死に場を収めようとする私だったが、そこへ新たな登場人物が現れる。
それは、見覚えのある一人の少女だった。
他の誰でもない、アリシアさんだ。
この『ドララ』世界のヒロインであり、私の親友でもある。
そんな彼女は、なぜか一人でこちらへと近づいてくる。
「アリシアさん!?」
私は思わず驚きの声を上げる。
どうして彼女がここにいるのだろう。
「アリシアさん、あなたどうやってここへ来たの?」
「話は後です、イザベラ様。今はそれよりもするべきことがあります」
アリシアさんが真剣な表情で言う。
確かに彼女の言う通り、まずはこの状況を収めることが先決だ。
エドワード殿下、カイン、オスカーは、とりあえず放っておこう。
取り乱しているだけだから。
何よりもまず対処するべきは、フレッドだ。
闇の瘴気が増幅してしまっている。
その瘴気は、広がり続けて今やエドワード殿下達にまで及んでいる。
悪い影響がないといいけれど……。
まぁ、まずはフレッドが先ね。
「アリシアさんの言う通りだわ。先にするべきことがある。私なんかの光魔法じゃ、あんなに強い闇は祓えなかったの」
私はアリシアさんにそう説明する。
いくら『ドララ』の知識を持つ転生者とはいえ、何でもできるわけじゃない。
光魔法は、頑張って練習してもなかなか上達しなかったのだ。
ここは正ヒロインの出番である。
「アリシアさん、お願い――むぐっ!?」
私はアリシアさんに頼もうとしたのだが、それより先に彼女に抱き着かれた。
そして、そのまま唇を奪われてしまったのだった。
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