(それはそうなるか……)
今日の体感温度が高い理由の一つは、貴族としてそれなりの厚着をしているからだ。
貴族たる者、みだりに肌を晒すわけにはいかない。
だが、それはあくまで女性の場合である。
男性の場合はそこまで厳しくはない。
「あ、イザベラ様!」
「イザベラ様が来られましたよ!」
「こ、これでもう安心ですわ!!」
そんなことを考えていると、皆が一斉に話しかけてくる。
……え?
一体、どういう状況??
私は困惑するが、それぞれの顔を見て事態を把握する。
「まさか……魔道具が故障していたの?」
「ええ……。その通りです。涼むためにここへ来たのに……辛いです」
ここは王立学園。
設備の管理体制はしっかりしているが、それでも故障することだってあるだろう。
本来、空調系の魔道具が活躍を始めるのは夏頃。
その利用時期の前には、点検だってされているはずだ。
しかし、今は三月後半。
昨夏から点検はされていないだろうし、突然の暑い日に故障していたとしても仕方のない面もある。
「これは……困ったことになりましたわね」
私は思案する。
どうしたものか。
このままでは、みんな熱中症になってしまうのではないだろうか。
「でも、どうしようもないわよね……」
修理業者を呼ぶにしても時間がかかるだろうし、その間は我慢してもらうしかないか――。
私がそう思った時だった。
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