私はフレッドからも秋祭りに誘われてしまった。
先約のアリシアさんのために、ここは断らないといけない。
「どうです? 気分転換になると思いませんか?」
「ごめんなさいね。実は、そもそも悩んでいたのは秋祭りのことなのよ」
「……はい?」
「だから、秋祭りに誰と行くかで迷っていたのよ。ほら、三通もの手紙をいただいてしまってねぇ……」
「…………」
フレッドは口をポカンと開けていた。
「こ、これは……。エドワード殿下、カインさん、それにオスカーさんですか。しかも、それぞれ家紋の入った正式な書式で……。なるほど、これが俗に言うモテ期というものですね」
「え? 違うわよ? モテてるんじゃないわ。秋祭りに誘われているだけだし……」
「それはモテているのと同じです!!」
フレッドは興奮気味に叫んだ。
「家紋付きの手紙で誘われていることの意味を、姉上も分かっておられるはずでしょう? つまり、婚約者として選ばれたいということですよ! 姉上も、それで悩まれていたのではありませんか? 」
「…………」
私は黙り込んでしまった。
この手紙を受けて、誰か一人を選ぶ。
それは、表面的には秋祭りのパートナーを選ぶだけの話だけど、ゆくゆくは大きな意味を持ってくるだろう。
私は、その選択を誤るわけにはいかないのだ。
「そ、そうよね……。うん、分かったわ。やっぱり慎重に考えないとね。じゃあ、今日のところは帰りなさい。また改めて相談させてもらうから。フレッドも忙しいでしょ? 私なんかに構っていないで自分の用事を済ませてきなさい!」
私は、弟を追い返そうとした。
こういうデリケートな悩みは一人で考えるべきだろう。
だが、彼は首を横に振る。
「いえ、今日は休みなので問題ありませんよ。それよりも、せっかくこうして居合わせたのですから、もっと話を聞かせてください! 僕だって、姉上の力になりたいんですよ。同じアディントン侯爵家ではありませんか。遠慮せずに何でも言ってください!」
「……」
確かに、私とフレッドはアディントン侯爵家の姉弟だ。
姉弟は力を合わせるべきという綺麗事だけでなく、侯爵家の方針を決める上でも彼の意見は参考になる。
もちろん、お父様には相談の手紙を別途出してはいるけれど……。
果たして、秋祭りまでにお父様からの助言の手紙が届くかどうか。
「……本当にいいの?」
「はい!」
「でも、相談したところで……。あっ! いいことを思いついたわ!」
「姉上?」
私は名案を思い付いた。
フレッドに話してみることにしよう。
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