乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

98話 僕の大事な女性

公開日時: 2022年8月22日(月) 09:50
文字数:1,316

「うぅ……。ここは……?」


 私は目を覚ました。

 頭が痛い。

 ええっと、何をしていたところだったっけ?


「おや、お目覚めですか。心配しましたよ」


 私の目の前から、男性の声が聞こえる。

 魔道具の照明がちょうど逆光となっており、彼の顔は見えにくい。

 これはどういう状況かしら?

 確か……。


(ああ、私は酔い潰れてしまったのね。思い出してきたわ……)


 まさか、飲み比べでたくさん飲んだあのジュースの正体がワインだったなんてね。

 まぁ、ジュースを飲み比べという時点で少しおかしいとは思っていたのだけど。

 アルコール入りなら、それも納得だ。


「ごめんなさいね。今、起きますわ」


 私は頭を浮かせ、起き上がろうとする。

 今の私は、この男性に膝枕をされている状態だ。

 逆光で彼の顔は見えにくいが、おそらくは年頃の男性だろう。

 私を膝枕している姿を他の者に見られたらマズい。


「いえ、もう少し横になっていていいですよ。貴女は酔って寝込んでしまったんですから」


「そうもいかないわ。あなたに迷惑をかけてしまうもの」


「迷惑だなんて、とんでもない。むしろ役得というものです」


「あら、そうなの? ふふっ。変な人ね。それじゃあ、お言葉に甘えてもうちょっとだけ休ませてもらうことにするわ。あなたの太もも、とても気持ちが良いの」


 私は再び頭の位置を戻し、目を閉じる。

 すると、彼はそっと私の髪を撫でてきた。

 その手つきはとても優しく、思わず心地良く感じてしまう。


(不思議と落ち着くわ。まるでお母さんに抱かれているような安心感がある……)


「まだ時間があるので、このまま眠っていてもいいですよ」


「…………」


 私は黙ったままだ。

 だが、眠りに落ちているわけではない。

 彼の声を聞いていると、なぜか心が落ち着くのだ。

 頭痛や吐き気といった症状も治まっている。

 もしかしたら、魔法を使ってくれたのかしら?

 でも、魔力の流れは感じない。

 どうなっているのだろう?


「あ、あの……」


「はい、なんでしょうか?」


「私を介抱してくださったのですか?」


「ええ、僕が調合したポーションを飲ませたんですよ」


「ポーションですって!? そのような高級なものを……」


 ポーションはなかなかに値が張る代物だ

 一瓶、最低でも金貨数枚はする。

 それを私が眠っている間に飲ませてくれたらしい。


「そんな高価なものを頂いてしまって良いのですか?」


「もちろんです。僕の大事な女性のためですからね」


「まぁ、そんな……」


 私は思わず赤面してしまう。

 顔が熱い。

 きっと真っ赤になっているはずだ。

 それにしても、この素敵な紳士はいったい誰なのだろう?




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(8/22現在はまだ転載途中で、最新話には追いついていません)


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こちらでも引き続き更新を頑張りますので、よろしくお願いいたします。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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