「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」
エドワード王子がそう宣言すると、会場は騒然となった。
誰もが、彼の言葉の意味を理解しようと必死になっているようだ。
「はい? えっと……どういうことでしょうか?」
イザベラは困惑している様子だ。
無理もない。
乙女ゲーム『ドララ』における婚約破棄イベントは、第六学年のイザベラが卒業するパーティーで発生する。
今の彼女はまだ第二学年だ。
今日の卒業パーティーは、あくまで卒業生を見送るだけの消化イベントに過ぎない。
彼女はそう思っていた。
「まったく、白々しい! お前のように性格の悪い女とは結婚できないと言っているのだ。アリシア嬢こそ俺にふさわしい」
イザベラは混乱していた。
どうしてこんなことになっているんだろう。
だって、私の計画通りなら―――。
(どうしよう。このままじゃ、エドワード様と婚約破棄されちゃう)
イザベラは動揺を隠しきれなかった。
顔色が真っ青になり、唇がわなわな震えている。
それでも何とか、彼女は口を開く。
「お言葉ですが殿下、どうしてそのようなことを仰るのです? 私達、うまくいっていたではありませんか」
「ふんっ、どの口が言うのだ。今までの俺はどうかしていた。アリシアへの嫌がらせの数々、俺の耳に入っていないと思っているのか?」
イザベラは冷や汗を流す。
エドワード王子に、虐めの現場を直接目撃されたことはない。
しかし、噂くらいは届いている可能性は考慮すべきだった。
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