秋祭りの日が訪れた。
夕方、私は会場へと向かう。
「あ、イザベラ様、こっちです!」
待ち合わせ場所には、すでにアリシアさんが立っていた。
「アリシアさん、こんばんは」
「はい、こんばんはです」
「待たせてしまったかしら? ごめんなさいね」
「いえ、全然大丈夫です! わたしも今来たところです」
アリシアは元気いっぱいといった感じだ。
今日の彼女はいつもよりオシャレをしている。
淡い色のドレスがよく似合っている。
「イザベラ様、今日はよろしくお願いします!」
「ええ、こちらこそ」
私はアリシアさんの挨拶に答えた。
そして二人で歩き出す。
ちなみにエドワード殿下とカインは不参加だ。
お断りの手紙も出したし、数日前には決闘までしたのだから当然である。
ちなみにオスカーとも一悶着あったのだが、無事に納得してもらえた。
今日の秋祭りには、三人の攻略対象は不参加である。
「アリシアさん、その……本当にいいのかしら?」
「はい? 何がですか?」
「だって、アリシアさんは可愛いもの。他の男の子達からも誘いがあったんじゃないの?」
「はい。ありましたよ。でもわたし、男なんかと一緒に行くよりもイザベラ様と行きたかったんです!」
アリシアは屈託なく笑う。
「そう……ありがとう。嬉しいわ」
「それに、わたしってあんまり社交的じゃないんで、男の人に誘われてもどうすればいいのか分からなくて……」
アリシアさんが苦笑する。
確かに、彼女の見た目は完全に癒やし系だ。
男性からは可愛がられるタイプだろうけど、男慣れはしていなさそうだ。
「それで、イザベラ様にいろいろ教えていただきたいと思っています」
「もちろんよ。私で良ければ喜んで」
私は笑顔で応じる。
アリシアさんが頼ってくれるのは嬉しいことだ。
「アリシアさん、その服とても似合ってるわ」
「あ、本当ですか!? わたし的には、ちょっと子供っぽいんじゃないかなって思ったりもしていたのですが……」
「そんなことないわ。すごく可愛いと思う」
「そ、そうなんですか……? えへへ……」
はにかみながらアリシアさんが照れる。
「やっぱりイザベラ様はすごいです。わたしみたいな地味な女の子にも優しいですし」
「そんなことはないでしょう? アリシアさんはとても魅力的だと思うわ」
「えぇっ? わたしなんて、イザベラ様に比べたらぜんぜんですよー」
アリシアは謙遜しているが、実際のところ、アリシアはかなりの美少女だ。
性格も穏やかで明るいし、男子生徒からの人気もある。
(残念ながら友達はあまりいないみたいだけど……)
まぁ、平民出身だしある程度は仕方ない。
いずれ彼女の魅力に気付く人が現れてくれることを祈るばかりである。
私はそんなことを考えながら、アリシアさんと歩いていった。
あれ?
そう言えば、誰かの存在を忘れているような……。
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