(あぁ、違うんだ……!)
本当はこんなことが言いたいんじゃない……!
僕は必死に抗う。
そして――
「姉……上……」
「フレッド? ――んぷっ!?」
僕は姉上の体を蝕む毒素を吸い出すため、口づけを行った。
姉上の困惑した視線が僕に向けられる。
「ぷはっ! ふ、フレッド……? これは一体……」
「もう、これしかないんです。姉上は、僕の大好きな姉上は……。こんなところで死ぬべきじゃない。だから、僕が命に代えても守ります。これが弟としての最後の役目なんですから……」
「ま、まさか今のは毒を吸い出したの……? どうして……?」
「姉上……。弱い僕を……闇に飲まれた僕を許してください……。どうか……生きて……」
僕はそう告げると、最後に愛しい人の顔を目に焼き付ける。
そして、その場に倒れ伏した。
もう指一本動かせない。
意識がどんどん遠のいていくのがわかる。
(これでよかったのかもしれないな……。姉上のために死ねるのならば本望だ)
薄れゆく意識の中、そんなことを考える。
だが――
「――ごめんなさい。エドワード殿下、フレッド、カイン、オスカー。そして……アリシアさん……」
姉上のそんな言葉が聞こえたような気がした。
毒を吸い出して終わりじゃなかった。
何かが姉上を害しようとしているようだ。
僕にできることは……。
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