フレッドの植物魔法によって、私、エドワード殿下、オスカーは捕らえられてしまった。
残るカインがフレッドを追い詰めたのだが、トドメは刺せない。
二人は友人関係にあるし、フレッドは私の義弟だからだ。
首筋に剣を突きつけたまでは良かったが、フレッドは諦めたふりをして魔力を練り上げていた。
カインはそれをまともに受けてしまい、お腹に大きな穴を空けられてしまった。
「てめぇ! よくもカインを!!」
「フレッド! あなた何をしているの!?」
「…………」
フレッドは無表情のまま何も答えない。
自分のしたことを理解していないのだろうか?
闇の瘴気により、正気を失ってしまっているのか……。
「うおおおぉっ! 【覇王闘気】!!」
「【絶対零度】!!」
エドワード殿下とオスカーが、それぞれ大技を発動する。
エドワード殿下を拘束していた蔦は引き千切られ、オスカーを拘束していた蔦は凍り付き粉々に砕け散った。
その余波で、私の蔦の拘束も緩む。
「くっ……」
フレッドは慌てて植物魔法を再発動させようとするが――
「させねぇよ」
「そこまでです」
エドワード殿下とオスカーがフレッドの植物魔法を阻止する。
「今だ! 早くカインを治せ!」
「はいっ!」
私は急いでカインの元に駆け寄り、回復魔法をかける。
だが、出血が多すぎる。
とてもじゃないが、助かりそうにない。
「ポーションを……って、ああっ! フレッドに預けていたのだったわ……」
普段の私は、懐にポーションをいくつか常備している。
でも、今日は楽しい秋祭り。
少しでも身軽に動けるようにと、フレッドに預けてしまっていたのだ。
こんなことなら持っておくべきだった。
(私がもっとしっかりしていれば……)
後悔先に立たずとはこのことだ。
「ごめんなさい……カイン」
涙が出てくる。
どうしてこうなった。
大切な人を守れない。
「……泣くな……イザベラ嬢」
「えっ?」
瀕死のはずのカインの声が聞こえてきた。
その声は弱々しいものだったけど、確かに聞き覚えのある彼のもの。
カインはゆっくりと目を開けたあと、力を振り絞るかのように言った。
「俺は大丈夫だ……だから泣かないでくれ」
「で、でも……そんなに血が出てるのに……」
「俺のことはいい……。それよりも、イザベラ嬢の無事を確認できてよかったよ。それに、あんたが泣いている姿を見る方がよっぽど辛いんだ。頼むから笑ってくれないか……?」
「カイン……」
カインは優しい笑みを浮かべながら、震える手で私の頬に触れる。
私は涙を拭き取り、笑顔を作ったのだった。
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