乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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140話 氷結世界

公開日時: 2022年11月7日(月) 11:50
文字数:775

 イザベラとオスカーが、講師を促した。


「あ、ああ。分かった。それじゃ、二人とも位置についてくれ」


 戸惑いながらも、講師が指示を出す。

 すると、オスカーが一人で前に出た。


「な、何を? まさか一人だけでやるつもりなのですか?」


「貴様、ふざけるなよ? そんなことが許されると思っているのか?」


 予想外の行動に、四席と五席が戸惑う。

 だが、オスカーはそんな彼らを無視し、講師に話しかけた。


「先生、いつでも始めてもらって結構です。こちらの準備は終えていますので」


「そ、そうなのか? いや、しかし、それはあまりにも――」


「構いません。むしろ、こちらの方が都合が良いくらいです」


「……? よく分からないが、まあいいか。よし、始めるぞ!」


 首を傾げるも、講師はそれ以上気にすることなく、開始の合図を出した。


「くっくっく。愚かですわねぇ。自ら負けに行くなんて」


「ああ、哀れだな。四席と五席の俺達でさえ、攻撃魔法を四発ずつ、時間にして五十秒もかかったんだ。たった一人でそれ以下の時間で終わらせるなんて、無理だろうよ」


 四席と五席が嘲るように笑う。

 だが、その言葉を聞いていたはずのイザベラとオスカーには動揺は見られない。


「ふぅー……」


 オスカーが大きく息を吐き、そしてカッと目を見開いた。


「氷の精霊よ、我が魔力を糧とし、万物を凍てつかせよ! 【氷結世界】!!」


 オスカーの手から放たれた冷気が、一瞬でゴーレムを飲み込んだ。

 その冷気の余波は、観戦していた他の生徒達にも及んだ。


「くっ……。とてつもない冷気ですわね……」


「だが、馬鹿な奴だぜ。土でできたゴーレムに氷魔法は効きにくいのによぉ」


 氷魔法が有効なのは、第一に植物系の魔物や飛行系の魔物だ。

 次に、通常の魔物や人族などである。

 一方で、ゴーレムなど鉱物系の魔物にはやや効きが悪いとされていた。

 オスカーの氷魔法は、果たしてゴーレムに通用するのだろうか――

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