イザベラとオスカーが、講師を促した。
「あ、ああ。分かった。それじゃ、二人とも位置についてくれ」
戸惑いながらも、講師が指示を出す。
すると、オスカーが一人で前に出た。
「な、何を? まさか一人だけでやるつもりなのですか?」
「貴様、ふざけるなよ? そんなことが許されると思っているのか?」
予想外の行動に、四席と五席が戸惑う。
だが、オスカーはそんな彼らを無視し、講師に話しかけた。
「先生、いつでも始めてもらって結構です。こちらの準備は終えていますので」
「そ、そうなのか? いや、しかし、それはあまりにも――」
「構いません。むしろ、こちらの方が都合が良いくらいです」
「……? よく分からないが、まあいいか。よし、始めるぞ!」
首を傾げるも、講師はそれ以上気にすることなく、開始の合図を出した。
「くっくっく。愚かですわねぇ。自ら負けに行くなんて」
「ああ、哀れだな。四席と五席の俺達でさえ、攻撃魔法を四発ずつ、時間にして五十秒もかかったんだ。たった一人でそれ以下の時間で終わらせるなんて、無理だろうよ」
四席と五席が嘲るように笑う。
だが、その言葉を聞いていたはずのイザベラとオスカーには動揺は見られない。
「ふぅー……」
オスカーが大きく息を吐き、そしてカッと目を見開いた。
「氷の精霊よ、我が魔力を糧とし、万物を凍てつかせよ! 【氷結世界】!!」
オスカーの手から放たれた冷気が、一瞬でゴーレムを飲み込んだ。
その冷気の余波は、観戦していた他の生徒達にも及んだ。
「くっ……。とてつもない冷気ですわね……」
「だが、馬鹿な奴だぜ。土でできたゴーレムに氷魔法は効きにくいのによぉ」
氷魔法が有効なのは、第一に植物系の魔物や飛行系の魔物だ。
次に、通常の魔物や人族などである。
一方で、ゴーレムなど鉱物系の魔物にはやや効きが悪いとされていた。
オスカーの氷魔法は、果たしてゴーレムに通用するのだろうか――
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