私がフレッドのキスを問い詰めていたところ、雷の轟音が轟いた。
いつの間にか、空は暗くなっている。
これは、間もなくかなり激しい雷雨になりそうだ。
「マズいわね。帰りましょうか、フレッド」
「……はい」
思わぬ天気の急変。
私はこれ幸いとばかりに、帰る口実にしてしまった。
フレッドと視線も合わさないまま、帰り道へと歩き出す。
だが、すぐに私は立ち止まった。
フレッドがついて来ていないからだ。
「フレッド? 早く行きましょ……!?」
振り向くと、そこにいるはずのフレッドの姿はなかった。
いや、フレッドは確かにそこに立っている。
しかし、彼の目からは黒いモヤのようなものが溢れ出していた。
その目は虚ろだ。
明らかに様子がおかしかった。
「フ、フレッド……?」
恐るおそる声をかけると、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「………………」
フレッドは何も言わない。
ただ、じっと私を見ている。
「ねぇ、フレッド。どうかしたの?」
「…………」
「フレッドったら……きゃっ!」
返事がないフレッドを心配して近づいた瞬間、私は腕を掴まれてしまった。
そのまま引き寄せられる。
「ちょっと、フレッド。どうしたのよ?」
私はフレッドの腕の中でジタバタと暴れた。
だが、ビクともしない。
『覇気』を使わない素の身体能力では、彼の方がすっかり力が強くなっていた。
「もう、離しなさいよ。冗談にしては悪趣味だわ」
「……」
やはり、フレッドは何の反応も示さない。
「ねぇ、フレッド。ふざけるのはやめてよ」
私は必死に訴える。
フレッドは相変わらず無言だ。
「お願いだから、何か言ってちょうだい。黙っていたらわからないわ。一体、何がしたいの?」
私は不安になって尋ねる。
すると、ようやくフレッドが口を開いた。
「……」
「え?」
よく聞き取れなかったので、私は耳を澄ませる。
すると――
「そこまでだ! 悪党め!!」
「俺のイザベラ嬢にいったい何をしてやがる!」
「私の氷魔法で凍らせてあげ――。って、フレッド殿!?」
聞き慣れた声が次々と耳に入ってくる。
顔を上げると、そこにはエドワード殿下、カイン、オスカーがいた。
彼らは今にも攻撃を放ちそうな体勢で、私達に向かって叫んでいた。
「エドワード殿下、カイン、オスカー様……」
私は安堵の声を漏らす。
フレッドは三人の登場に驚いたのか、腕を緩めた。
私は慌ててフレッドから離れる。
「大丈夫か? 遅くなってすまなかった」
「無事そうで良かったぜ」
「それにしても、これはいったいどういうことですか? ご説明いただきたい、フレッド殿」
三人は、フレッドを問い詰め始めたのだった。
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