「所要時間三秒、打ち込み魔法数は一発……。も、文句無しの最高成績です」
「ふん、当然ですわね」
イザベラは満足そうな笑みを浮かべる。
「素晴らしい! さすがはイザベラ殿です!!」
「おほほ。まぁ、オスカー様も悪くはありませんでしたわよ。氷魔法に限定すれば、私より優秀かも知れませんわね」
「ありがとうございます。ですが、やはり私はまだまだです。イザベラ殿のように初級の魔法でゴーレムを倒すなど、私にはとてもできません。もちろん、私の得意魔法である氷魔法でも……」
「ふふ。謙遜なさらずとも良いのですわよ? オスカー様なら、数年以内には可能になりますから」
「ははは、これは手厳しい」
オスカーは苦笑いをした。
数年以内には、イザベラと同じことが可能になる――。
逆に言えば、この先の一ヶ月や二ヶ月程度では、追いつけないということでもある。
オスカーはそのことを理解していた。
(だが、それでいい。今は少しでも長く……彼女の側にいたい)
オスカーは心の中で呟く。
そして、彼の隣に立つ美しい令嬢を、愛おしむような目で見つめた。
イザベラ・アディントン。
思わず見惚れるほどの美貌。
千年に一人とも言われるレベルの魔法の才能。
長年難病に指定されていた魔乏病の特効薬を幼少期に開発したり、領地経営に行き詰まっていたシルフォード伯爵領に有益な助言をしたりするなど、実績も十分。
座学、マナー、ダンスなども安定して高いレベルにあり、主席で王立学園に入学して以降、常に学年首位を独走している。
まさに完璧超人と呼ぶに相応しい人物だ。
(どうしてでしょうか……。何か、以前とは雰囲気が激変してしまったような気もします……。しかし、私の感性も変わってしまったのか、高飛車で傲慢な彼女もまた魅力的に感じてしまう……)
オスカーは、自身やイザベラの異変に勘づいていた。
だが、あえてそのことには触れずに、今日も彼女との時間を過ごすことを選択した。
否、闇の瘴気に侵された時点で、もう引き返せないところまで来てしまっていたのかも知れない。
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