乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

145話 高飛車で傲慢

公開日時: 2022年11月24日(木) 19:20
文字数:833

「所要時間三秒、打ち込み魔法数は一発……。も、文句無しの最高成績です」


「ふん、当然ですわね」


 イザベラは満足そうな笑みを浮かべる。


「素晴らしい! さすがはイザベラ殿です!!」


「おほほ。まぁ、オスカー様も悪くはありませんでしたわよ。氷魔法に限定すれば、私より優秀かも知れませんわね」


「ありがとうございます。ですが、やはり私はまだまだです。イザベラ殿のように初級の魔法でゴーレムを倒すなど、私にはとてもできません。もちろん、私の得意魔法である氷魔法でも……」


「ふふ。謙遜なさらずとも良いのですわよ? オスカー様なら、数年以内には可能になりますから」


「ははは、これは手厳しい」


 オスカーは苦笑いをした。

 数年以内には、イザベラと同じことが可能になる――。

 逆に言えば、この先の一ヶ月や二ヶ月程度では、追いつけないということでもある。

 オスカーはそのことを理解していた。


(だが、それでいい。今は少しでも長く……彼女の側にいたい)


 オスカーは心の中で呟く。

 そして、彼の隣に立つ美しい令嬢を、愛おしむような目で見つめた。

 イザベラ・アディントン。

 思わず見惚れるほどの美貌。

 千年に一人とも言われるレベルの魔法の才能。

 長年難病に指定されていた魔乏病の特効薬を幼少期に開発したり、領地経営に行き詰まっていたシルフォード伯爵領に有益な助言をしたりするなど、実績も十分。

 座学、マナー、ダンスなども安定して高いレベルにあり、主席で王立学園に入学して以降、常に学年首位を独走している。

 まさに完璧超人と呼ぶに相応しい人物だ。


(どうしてでしょうか……。何か、以前とは雰囲気が激変してしまったような気もします……。しかし、私の感性も変わってしまったのか、高飛車で傲慢な彼女もまた魅力的に感じてしまう……)


 オスカーは、自身やイザベラの異変に勘づいていた。

 だが、あえてそのことには触れずに、今日も彼女との時間を過ごすことを選択した。

 否、闇の瘴気に侵された時点で、もう引き返せないところまで来てしまっていたのかも知れない。

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