イザベラがアリシアを罵倒した。
エドワード王子と談笑していたことを咎められたアリシアは、顔を青ざめさせる。
イザベラの表情には悪意しか感じられなかった。
「……ごめんなさい」
アリシアはその謝罪の言葉を述べると、逃げるようにその場を離れた。
階段を下りていくその足取りは重く、今にも倒れてしまいそうだ。
イザベラはそんな彼女を目で追う。
(ふんっ。ただ去るだけで許されるはずがないでしょう? 報いを与えてあげますわ)
彼女はアリシアに勘付かれないように、魔力を練る。
そして――
「きゃあっ!?」
ドンガラガッシャーン!
階段から足を滑らせたアリシアは、盛大に転倒してしまった。
イザベラはその様子を見てほくそ笑む。
アリシアは痛みに耐えながらも立ち上がろうとするが、上手く身体に力が入らないようであった。
「あら、大丈夫かしら?」
イザベラは心配そうな表情を作り、アリシアに声をかけた。
「だ、だいじょうぶです……」
アリシアは弱々しく返事をする。
その顔色は真っ白で、明らかに痛みに堪えている様子だ。
(ふふっ、いい気味だわ)
イザベラは嗜虐的な笑みを浮かべると、再び魔力を練り始める。
「私が治療して差し上げましょう。――【ダーク・ヒール】」
「へ? あ、ああああぁ! 痛い、痛いぃ!」
イザベラが魔法を唱えると、アリシアは絶叫を上げる。
傷口を焼かれるような激痛に、アリシアは悶絶していた。
「そこで何をしている!」
いつの間にか近くに来ていたエドワードが、イザベラに向かって声をかける。
「殿下……」
イザベラは驚きつつも、冷静さを装って答えることにしたのだった。
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