乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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85話 ちょ、ちょっと待ってくださいましぃっ!!

公開日時: 2022年8月9日(火) 10:28
文字数:1,016

 中庭で、エドワード殿下とカインが口論になった。

 そして、戦いで決着を付けようという流れになった。


「へへ。剣術で俺に勝てると思うなよ、エド」


「いつまでも俺の上だと思い上がるな!」


 二人は木剣を構えつつ、睨み合……ってない?

 何故か二人共、こちらを見ているような気が……。


「……」


「……」


「……?」


 あれれ?

 何やら嫌な予感が……。


「では行くぞっ! 覚悟しろ!!」


「イザベラ嬢から一本取るのは俺だぜ!」


 次の瞬間、二人は私に向かって走り出した。


「どえええええ!!??」


 私は驚いて声を上げた。

 なんでこうなるのー!?


「俺の女になれ、イザベラ!」


「今日こそ勝つぜ、イザベラ嬢!」


「ちょ、ちょっと待ってくださいましぃっ!!」


 私は叫びながらも、急いで木剣を取り出した。


「はあっ!」


「うおっと!」


「ぐっ!!」


 私は二人の剣を防ぎ、そのまま弾き飛ばした。


「な、何のつもりですの!?」


「決まっているだろう。成長した俺の剣術をイザベラに見てもらおうという話だ」


「へへ。俺はイザベラ嬢を守れる男になるのが目標なんだ。当然、イザベラ嬢より俺が弱くちゃ話にならねぇ。まずは俺がイザベラ嬢を超えているってことを見てもらうぜ!」


「…………」


 確かに、私の近接戦闘能力はカインやエドワード殿下よりも上だ。

 剣術と身体能力だけなら、私よりもカインが上。

 でも、私には『覇気』がある。

 それを込みで考えれば、私が負けることはない。


「仰ることは分かりますけど……。それにしたって、私のような淑女を二人がかりで襲うなんて……」


「淑女? あんな大きな魔獣を倒す淑女なんていないだろ。イザベラ嬢の戦闘能力は化け物さ」


「その通り。イザベラは通常の枠に収まる女性ではない。まあ、それでこそ次期国王の俺に相応しいのだが……」


「…………」


 二人に好き勝手なことを言われ、私は思わず沈黙してしまう。

 確かに三か月ほど前の実地訓練で、大型の魔獣を倒したけどさ。

 私のような可憐なレディを化け物扱いは酷いじゃないか。


「イザベラ。俺が勝ったら結婚してもらうぞ」


「俺はいきなり結婚とは言わねぇけどよ。まずは一日デートしてくれよな」


「……」


 エドワード殿下もカインも、まるで引く様子がない。

 どうやら二人とも、完全に本気モードらしい。

 こうなった以上、仕方ないか。


 ……よし!

 ここは全力でお相手をしよう!

 私を化け物扱いしたことを後悔させてやる!


「ふぅ~……」


 私は深く息を吐き、気持ちを落ち着かせる。

 そして、ゆっくりと構えを取ったのだった。

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