中庭で、エドワード殿下とカインが口論になった。
そして、戦いで決着を付けようという流れになった。
「へへ。剣術で俺に勝てると思うなよ、エド」
「いつまでも俺の上だと思い上がるな!」
二人は木剣を構えつつ、睨み合……ってない?
何故か二人共、こちらを見ているような気が……。
「……」
「……」
「……?」
あれれ?
何やら嫌な予感が……。
「では行くぞっ! 覚悟しろ!!」
「イザベラ嬢から一本取るのは俺だぜ!」
次の瞬間、二人は私に向かって走り出した。
「どえええええ!!??」
私は驚いて声を上げた。
なんでこうなるのー!?
「俺の女になれ、イザベラ!」
「今日こそ勝つぜ、イザベラ嬢!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいましぃっ!!」
私は叫びながらも、急いで木剣を取り出した。
「はあっ!」
「うおっと!」
「ぐっ!!」
私は二人の剣を防ぎ、そのまま弾き飛ばした。
「な、何のつもりですの!?」
「決まっているだろう。成長した俺の剣術をイザベラに見てもらおうという話だ」
「へへ。俺はイザベラ嬢を守れる男になるのが目標なんだ。当然、イザベラ嬢より俺が弱くちゃ話にならねぇ。まずは俺がイザベラ嬢を超えているってことを見てもらうぜ!」
「…………」
確かに、私の近接戦闘能力はカインやエドワード殿下よりも上だ。
剣術と身体能力だけなら、私よりもカインが上。
でも、私には『覇気』がある。
それを込みで考えれば、私が負けることはない。
「仰ることは分かりますけど……。それにしたって、私のような淑女を二人がかりで襲うなんて……」
「淑女? あんな大きな魔獣を倒す淑女なんていないだろ。イザベラ嬢の戦闘能力は化け物さ」
「その通り。イザベラは通常の枠に収まる女性ではない。まあ、それでこそ次期国王の俺に相応しいのだが……」
「…………」
二人に好き勝手なことを言われ、私は思わず沈黙してしまう。
確かに三か月ほど前の実地訓練で、大型の魔獣を倒したけどさ。
私のような可憐なレディを化け物扱いは酷いじゃないか。
「イザベラ。俺が勝ったら結婚してもらうぞ」
「俺はいきなり結婚とは言わねぇけどよ。まずは一日デートしてくれよな」
「……」
エドワード殿下もカインも、まるで引く様子がない。
どうやら二人とも、完全に本気モードらしい。
こうなった以上、仕方ないか。
……よし!
ここは全力でお相手をしよう!
私を化け物扱いしたことを後悔させてやる!
「ふぅ~……」
私は深く息を吐き、気持ちを落ち着かせる。
そして、ゆっくりと構えを取ったのだった。
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