「……え?」
イザベラは驚きのあまり硬直していた。
無理もないことだ。
目まぐるしく変わる状況。
かつて親しくしていたエドワード王子、フレッド、オスカー、アリシアが次々に意識を失っていった。
そして今、カインが自分に対して血走った目で殺意を向けているのだから。
「ひっ……!」
そんなイザベラに対して、カインはゆっくりと近付いていく。
一歩ずつ、確実に距離を詰めていく。
獲物を追い詰めるように、じわじわと歩を進めていく。
そうして少女の目の前までやって来ると――
「――ガアッ!! アアアアァッ!!!」
剣を自分の腕に突き刺した。
傷口からは大量の血が噴き出すが、カインはまるで意に介さない様子で更に深く突き刺す。
何度も何度も繰り返していく。
やがて皮膚が裂け肉が見え始めた頃になってようやく、彼はその手を止めた。
「……グゥ」
荒い息を吐くカイン。
彼は血まみれになった自分の手を見ると――最後に、剣を自分の胸へと突き立てた。
「……ぁ……え……?」
一連の行動を見ていたイザベラの口から、小さく声が漏れる。
目の前で起こった出来事に理解が追いつかないといった様子だ。
訳も分からないまま呆然としていると――
「幸せになってくれ……イザベラ嬢……」
――その言葉を残して、カインは血溜まりの中に倒れ伏したのだった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!