「結婚してくれ」
カインはもう一度繰り返す。
「な、なななな――」
私は動揺のあまり言葉が出てこなかった。
「い、いきなり何を言うのよ!?」
「だから、お礼として結婚してくれと言っている」
「な、なんでそうなるのよ!」
「俺はいつでも心の準備ができているんだぜ? イザベラ嬢さえ良ければ、すぐにでも結婚したいくらいさ」
「…………」
私は絶句してしまう。
カインは私の反応を見て楽しげな笑みを浮かべていた。
からかっているのね……。
「あのね……。そういう冗談は止めてくれるかしら?」
「本気なんだけどなぁ……。ま、ちょっとした助言くらいで結婚ってのは虫がよすぎたか」
「……そもそも、私達はまだ学生なのよ」
「それもそうか」
彼はあっさりと引き下がる。
どうやら、私の反応を見て楽しんでいただけのようだ。
まったく……。
「でも、ま。俺もまだまだ諦めていないってことだけは覚えておいてくれよな。俺が卒業するまで、まだ三年間が残っている。その間に、イザベラ嬢に相応しい男になってみせるさ」
「……」
私は沈黙してしまう。
何だか告白みたいな台詞だ。
「……とにかく、魔法の開発に戻るわ。また今度、皆で遊んだりしましょう」
「ああ。楽しみにしているぜ」
そう言い残して、彼は去って行った。
そして数日後、私はカインの助言を活かして新しい防御魔法の開発に成功したのだった。
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