乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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200話 イザベラ嬢-3【カイン視点】

公開日時: 2023年6月5日(月) 15:16
文字数:547

「ぐっ……」


「ははは! ざまあみろ!!」


 大人げない奴だ……。

 俺みたいな子供に手を上げるとは。

 まぁ、大金を持った貴族の娘を狙った時点で同類かもしれないが。

 しかし、ここで諦めるわけにはいかない。

 どうにか逃げる算段をつけなくては……。


「待ちなさい。子供を殴るとは何事ですか」


 そこに現れたのが、財布の持ち主――イザベラ嬢だった。

 彼女は、チンピラとその仲間達を魔法であっさりと無力化してみせた。


(強い……!)


 俺は魔法使いの知り合いがいない。

 だが、それでも見れば分かる。

 彼女の魔法は凄まじいものだった。


「――あなたのやったことは許される事ではないと思うの」


「へっ。言って聞かせられないなら、衛兵に突き出そうってか?」


 断罪の時間がやって来た。

 彼女にかかれば、俺なんて蟻のようなものだろう。

 逃亡も戦闘も無意味だ。

 せめてもの抵抗といえば、悪態をつくことくらいか。

 だが――イザベラ嬢は予想外の言葉を返してきた。


「あなたはスリをしないで、真っ当に生きてほしいの」


「はっ、そんなの無理だよ。真っ当に生きるだけじゃ、腹は膨れねえ」


 俺はそう反論する。

 だが、イザベラ嬢にとっては想定内の答えだったようだ。


「私があなたに生き方を教えてあげるわ。当面生きていけるだけのお金。それに、魔法の使い方だってね」


「なっ!? そ、それは……」

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