「ぐっ……」
「ははは! ざまあみろ!!」
大人げない奴だ……。
俺みたいな子供に手を上げるとは。
まぁ、大金を持った貴族の娘を狙った時点で同類かもしれないが。
しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
どうにか逃げる算段をつけなくては……。
「待ちなさい。子供を殴るとは何事ですか」
そこに現れたのが、財布の持ち主――イザベラ嬢だった。
彼女は、チンピラとその仲間達を魔法であっさりと無力化してみせた。
(強い……!)
俺は魔法使いの知り合いがいない。
だが、それでも見れば分かる。
彼女の魔法は凄まじいものだった。
「――あなたのやったことは許される事ではないと思うの」
「へっ。言って聞かせられないなら、衛兵に突き出そうってか?」
断罪の時間がやって来た。
彼女にかかれば、俺なんて蟻のようなものだろう。
逃亡も戦闘も無意味だ。
せめてもの抵抗といえば、悪態をつくことくらいか。
だが――イザベラ嬢は予想外の言葉を返してきた。
「あなたはスリをしないで、真っ当に生きてほしいの」
「はっ、そんなの無理だよ。真っ当に生きるだけじゃ、腹は膨れねえ」
俺はそう反論する。
だが、イザベラ嬢にとっては想定内の答えだったようだ。
「私があなたに生き方を教えてあげるわ。当面生きていけるだけのお金。それに、魔法の使い方だってね」
「なっ!? そ、それは……」
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