「殿下、お答えくださいませ……。殿下は……、私を愛してくださっていたはずです……。なのに、なぜこのようなことを……?」
「真実の愛に目覚めただけだ。アリシア嬢こそ、俺の運命の人なんだ」
エドワード王子は最後にそう呟いたかと思うと、剣を勢いよく振り下ろした。
イザベラに出来ることは、静かに瞼を閉じることのみ。
こうして、迷い人の記憶が混じりこんだイザベラの人生は幕を閉じた。
――――……はずだったのだが。
「……あれ?」
いつまで待っても、イザベラは死を迎えていなかった。
恐る恐る目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「……殿下?」
イザベラの前に立っていたのは、エドワード王子。
だが、イザベラに対して振り下ろされたはずの剣は、なぜかエドワード王子自身の腹に深々と突き刺さっていた。
状況を理解できずに困惑するイザベラ。
「ぐっ……、かっ……!」
対するエドワード王子は、苦しそうな表情を浮かべながらもイザベラを見据えていた。
まるで何かを訴えかけるような眼差しである。
「一体何が……?」
「イザベラ、この場から離れてくれ……」
「……いったい何を仰っているのです!?」
不可解であった。
イザベラを処刑するべく剣を振り上げたのはエドワード王子の意思。
それなのに、今度はイザベラに対して逃げるように言うのだから。
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