アリシアさんとフレッドの対立が激化している。
アリシアさんは私を強引に組み伏せようとするし、フレッドはそんな彼女に飛び蹴りをかますし、もう滅茶苦茶だ。
「異常な同性愛者め! イザベラさんに手は出させん!!」
フレッドがそんなことを叫びながら、アリシアさんに殴りかかる。
「気持ち悪いシスコン男が! お前こそ、イザベラ様には近づくんじゃねぇ!!」
対するアリシアさんも、フレッドに反撃する。
二人共口調が荒っぽいし、表情も怖い。
普段こんなに乱暴な話し方はしない。
「この……! イザベラさんから離れろ!」
「うるさい! 変態の分際で……!」
二人が激しい取っ組み合いを始める。
そんな中、フレッドの手がアリシアさんのドレスにかかる。
「ひゃははぁっ!!」
彼はそれを脱がしにかかった。
アリシアさんの胸元が大きく露わになる。
フレッドがこんな盗賊みたいなことをするなんて……。
実は、アリシアさんのことも性的な目で見ていたのだろうか?
私は思わず目を逸らす。
「て、テメェ! ふざけんなよ!?」
アリシアさんが激昂した。
彼女の瞳に宿る闇が、より一層濃くなる。
「それはこっちのセリフだ!! お前のような変態にイザベラさんのドレスはもったいない!」
あ~。
そう言えば、あのドレスは私のものだね。
アリシアさんが元々着ていたドレスは汚れちゃったりしたのだろう。
フレッドがドレスを脱がしにかかっているのは、その下にある肉体が目的じゃなくて、あくまでドレス自体が目的だったか。
「調子に乗るなぁっ!!! これはわたしとイザベラ様の絆の証だああぁっ!!」
アリシアさんが両手を振り上げる。
次の瞬間、巨大な漆黒の爪が現れた。
闇の瘴気によるものだ。
「死ねやオラァッ!!」
アリシアさんが鋭い爪をフレッドに向けて振り下ろす。
しかし、その攻撃は空を切る。
フレッドは軽やかな動きで攻撃をかわす。
そして、カウンターでアリシアさんに拳を叩き込んだ。
「ぐふぅっ!?」
アリシアさんが血反吐を吐き出す。
「おらあっ! どうだ? まだやるのか?」
「ぐっ、うっ……」
アリシアさんの動きが鈍くなる。
フレッドの攻撃を受けてダメージを負ったようだ。
闇の瘴気を帯びてお互いに遠慮無しになった状態なら、フレッドの方が少し強いのかな?
(って、こんな風に静観している場合じゃないのだけれど……。二人共速すぎて、とても割り込めない)
このままだと、間違いなくマズい。
それが分かっていても、私はただ祈ることしかできないのだった。
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