「悪いけど、私は忙しいのよ。貴女達と違って、将来の王妃候補なのよ? 未来の夫を支えるために、様々なことをする必要があるわ」
イザベラが、カインとオスカーの言葉を一刀両断する。
彼女は、アリシアを排除し、エドワード王子との関係を盤石にすることしか頭になかった。
そして同時に、油断もしていた。
今の彼女にも『ドララ』の知識はある。
バッドエンドが開始するのは、自分達が第六学年になったときの卒業パーティ。
逆に言えば、それまではいくら好感度が下がろうとも、バッドエンドには直結しないということだ。
だから、エドワード王子以外の攻略対象は冷たくあしらって遠ざけてきたし、アリシアを排除するために手段を選ばず虐めてきた。
しかし、ここは『ドララ』と完全に同じ世界というわけではない。
フレッド、カイン、オスカー、エドワード王子、アリシア……。
『ドララ』においてそれぞれの幼少期に起きた悲しい出来事を、この世界のイザベラは回避させてきた。
だからこそ、『ドララ』にはなかったはずのイレギュラーが発生している。
イザベラはそのことを忘れていた。
もし仮に、イザベラが闇の瘴気を回避できていれば……あるいは違った未来もあっただろう。
だが、もう遅い。
狂った運命の歯車は、動き始めてしまっているのだ。
「イザベラ、そのことだがな……」
エドワード王子が口を開く。
さすがに言い過ぎだと、小言を言われるのだろうか。
あるいは、度重なるアリシアへの虐め行為に対して、牽制されるのか。
せいぜいその程度だろうと、イザベラは油断しきっていた。
「あら、エドワード殿下? 何でしょうか?」
イザベラは、可愛らしく首を傾げて見せる。
そんな仕草を見て、エドワードは一瞬頬を緩ませる。
だがすぐに表情を引き締めると、彼はこう告げた。
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」
イザベラは一瞬何を言われたのか理解できず、呆然と立ち尽くしたのだった。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!