乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

168話 婚約破棄

公開日時: 2023年2月13日(月) 10:26
文字数:782

「悪いけど、私は忙しいのよ。貴女達と違って、将来の王妃候補なのよ? 未来の夫を支えるために、様々なことをする必要があるわ」


 イザベラが、カインとオスカーの言葉を一刀両断する。

 彼女は、アリシアを排除し、エドワード王子との関係を盤石にすることしか頭になかった。

 そして同時に、油断もしていた。

 今の彼女にも『ドララ』の知識はある。

 バッドエンドが開始するのは、自分達が第六学年になったときの卒業パーティ。

 逆に言えば、それまではいくら好感度が下がろうとも、バッドエンドには直結しないということだ。

 だから、エドワード王子以外の攻略対象は冷たくあしらって遠ざけてきたし、アリシアを排除するために手段を選ばず虐めてきた。

 しかし、ここは『ドララ』と完全に同じ世界というわけではない。

 フレッド、カイン、オスカー、エドワード王子、アリシア……。

 『ドララ』においてそれぞれの幼少期に起きた悲しい出来事を、この世界のイザベラは回避させてきた。

 だからこそ、『ドララ』にはなかったはずのイレギュラーが発生している。

 イザベラはそのことを忘れていた。

 もし仮に、イザベラが闇の瘴気を回避できていれば……あるいは違った未来もあっただろう。

 だが、もう遅い。

 狂った運命の歯車は、動き始めてしまっているのだ。


「イザベラ、そのことだがな……」


 エドワード王子が口を開く。

 さすがに言い過ぎだと、小言を言われるのだろうか。

 あるいは、度重なるアリシアへの虐め行為に対して、牽制されるのか。

 せいぜいその程度だろうと、イザベラは油断しきっていた。


「あら、エドワード殿下? 何でしょうか?」


 イザベラは、可愛らしく首を傾げて見せる。

 そんな仕草を見て、エドワードは一瞬頬を緩ませる。

 だがすぐに表情を引き締めると、彼はこう告げた。


「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」


 イザベラは一瞬何を言われたのか理解できず、呆然と立ち尽くしたのだった。

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