フレッドの様子がおかしい。
駆けつけたエドワード殿下、カイン、オスカーの情報によると、闇の瘴気とやらの影響らしい。
何でも、百年前にも似たようなことが起きた記録があるとか。
「エドワード殿下! アリシアさんを早く探してきてください!!」
私は声を上げる。
すると、エドワードは少し考える素振りを見せた後、こう言った。
「アリシアか? 俺達はどこへ行ったか把握していないぞ。むしろ、イザベラの方がよく知っているはずだろう?」
「…………へ?」
私は間の抜けた声を出す。
「確かにその通りですね。イザベラ殿は、アリシア殿やフレッド殿とこの秋祭りを回っておられたではありませんか」
「だな。ずいぶんと楽しんでいたじゃねぇか。酔って忘れちまったのか? 飲み過ぎだぜ、イザベラ嬢」
オスカーとカインまでそんなことを言う。
どうして彼らが私のことを……って、そう言えば彼らはストーカーだった。
私が秋祭りを楽しむ様を、陰ながら尾行して覗いていたのだ。
でも、腑に落ちないところがある。
「私がアリシアさんと? 私はフレッドと二人で……いや、そう言えば酔ってダウンする前はアリシアさんもいたような……?」
記憶がかなりあやふやだ。
頭がガンガンする。
アルコールの飲み過ぎ?
いや、それだけじゃない気がする。
頭の中にモヤがかかったような……。
「………………」
フレッドは何も言わずに、私を見つめている。
無表情で何を考えているのか分からないけど、なんとも不気味だ。
「とにかく、ここは俺達に任せて、お前は休め」
「はい。よろしくお願いいたします」
エドワード殿下の言葉に、私は素直に返事をする。
フレッドの体は鍛えられており、護身術も修めている。
第一学年の中では抜きん出た戦闘能力を持つ。
だが――
「フレッドよ。闇の瘴気とやらに屈するとは、不甲斐なし。次期国王たる俺が正してやろう」
「俺は、イザベラ嬢だけでなくお前さんにも借りがある。正気に戻るよう手伝ってやるぜ」
「私達で無力化させてもらいましょう。多少手荒になろうとも、やむを得ませんね」
この三人には敵わないだろう。
エドワード殿下は、第三学年の総合主席であり、剣術においても次席だ。
カインは第三学年の剣術主席。
オスカーは、第二学年で私やアリシアさんと共に成績上位を争っている。
「…………」
無言でこちらを睨むフレッドを、三人が取り囲む。
彼らなら無事にフレッドを無力化してくれるはずだ。
その間に、私も何とか体調を整えないと……。
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