私はエドワード殿下とカインに二人がかりで勝負を挑まれている。
(ここは勝ちを譲ってもいいのだけれど……。二人共かなり本気だし、それはさすがに失礼ね)
彼らの思いに気付かないほど鈍感な私ではない。
私を想って剣技を高めてくれた二人に対して、手を抜いては失礼だ。
それに、私のことを化け物扱いしてくれたお礼もしないとね。
「行きますわよ、殿下、カイン」
「ああ」
「来いっ、イザベラ嬢!」
カインの言葉を合図に、私達は同時に動き出す。
「くらいなさい! 【天剣斬・百式】!!」
私は一瞬にして、百本の光の剣を生み出して飛ばす。
「なっ!?」
「くそっ!」
二人は咄嵯に避ける。
しかし、全ての攻撃を避けきれず、肩や腕にかすり傷を負う。
「まだまだですわよ!」
私は両手に魔力を込め、一気に解き放つ。
「【覇王の光弾】!!」
私の手から放たれた無数の光線は、縦横無尽に駆け巡りながら二人を襲う。
「ぐおおおっ!?」
「ぐうっ!?」
二人の身体に次々と命中し、吹き飛ばしていく。
「「…………」」
いつの間にか集まっていたギャラリー達が、しんと静まり返る。
やがて、パラパラと拍手の音が鳴り始めたかと思うと、それは瞬く間に大きくなり、大歓声へと変わった。
「きゃー!! すごいです、イザベラ様ー!!」
「カッコイイー!!」
「素敵ですわぁ!!」
「やっぱり俺達の守り神は最強だぜ!」
「いいぞー、武神イザベラ様!」
私は笑顔を浮かべ、小さく手を振った。
何だか聞き捨てならない呼び方をされた気がするけど、聞かなかったことにしよう。
「ふう……」
私は一仕事終えた気分になり、額の汗を拭う。
「……うう」
「ちくしょう……」
そんな私とは対照的に、ボロ雑巾のように転がっているエドワード殿下とカインは、悔しそうにうめいている。
「すみません。お二人とも強かったので、手加減ができませんでした」
「くっ! 俺の努力もまだまだ足りなかったということか……」
「イザベラ嬢、強すぎんだろ……。がふっ!」
二人共、それなりにダメージは大きいようだ。
これ以上戦うのは難しいだろう。
「それでは、戦いはこれで終わりということで」
「……ああ。こうも力の差を見せつけられてはな。秋祭りの件を食い下がるつもりだったが、今回は諦めることにしよう」
「へへ。イザベラ嬢は存分に楽しんでくれよ。俺はその間に、少しでも鍛えておくからよ」
二人が敗北を認めてくれる。
よく分からないけど、秋祭りのことを諦めていなかった様子だ。
結果的には良かったのかな?
全校生徒レベルで目立ってしまっていることは、なかったことにしたいけど……。
「イザベラ様ー!」
「うおおおぉっ!」
「素敵ー!」
まだ聞こえてくる歓声は聞こえなかったことにして、私はその場を離れたのだった。
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