乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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149話 跪け

公開日時: 2022年12月8日(木) 09:39
文字数:1,054

「黙れ!! それ以上言うと許さんぞッ!!!」


「ははっ。そうやってムキになるところが、ますます怪しいってもんだぜ? 本当はエドも分かってるんじゃないか?」


「この……ッ」


 エドワード王子が剣を抜いた。

 そのままカインへと斬りかかる。


「おぉっと」


 カインはそれを難なく受け止めた。

 激しい鍔迫り合いが発生する。

 二人とも一歩たりとも譲らない。

 そんな騒ぎを聞きつけてか、女生徒達がまた集まってきた。


「わぁっ! 一日に二試合なんて、珍しいですわね!」


「それも、いつもは休憩なさっている場所で……?」


「ご様子がおかしいですわ! まるで、本気で殺し合いをなさっているような……」


 女生徒達の多くは、剣術の心得を持っていない。

 だが、曲がりなりにも長い間観戦してきた者達だ。

 エドワード王子とカインの様子が普段とは異質なことに気付いた。


「ほぅら、やっぱりギャラリーが増えてきたぜ? いいのかぁ? 国の将来を担う次期国王様が、一時の感情で剣を振りかざしてよぉ」


「ぐぬ……ッ」


 エドワード王子は悔しげに歯噛みした。

 それから、大きく後ろへ飛び退いて距離を取る。

 そして、再び構えを取った。


「【跪け】!」


 エドワード王子の放った一言。

 それには『覇気』が込められている。

 イザベラのそれと同種だ。

 カインはそれに抗ったが――


「きゃあっ!?」


「か、体が勝手にっ!?」


「ひぃっ! か、顔に傷が……」


 女生徒達は、エドワード王子の言葉に縛られて動けなくなった。

 中には顔ごと勢いよく跪いたことで、傷を負ってしまった女生徒さえいた。


「下等な女共め……。俺の邪魔をするなぁっ!!!」


「う、ああぁ……」


「あうっ……」


 エドワード王子の『覇気』を受けて、女生徒達が意識を失っていく。


「ひゅうっ! やるねぇ!」


 だが、カインは平然としていた。

 彼は口笛を吹きながら、剣をくるりと回して肩に乗せる。


「お前とは、どうやら優劣をはっきりさせておく必要があるようだ」


「そのために、邪魔な目撃者を消したってか? ファンなのに可哀想じゃねぇか」


「抜かせ。イザベラ以外の女など、ただの雌猿と同じだ」


「へへっ。ま、概ね同感かな――っと!」


 カインは倒れ込んでいる女生徒を掴み上げると、エドワード王子に向けて投擲した。

 エドワード王子はそれを軽く躱すと、そのままカインに攻撃を加える。


「チィッ! いい反応するじゃねぇか!」


「ふん。お前のやりそうなことは読めているさ」


 エドワード王子とカインの戦いは熾烈を極めていく。

 ファンの女生徒達は大なり小なり被害を被った。

 しかし幸か不幸か、それが二人によるものだと知ることはなかったのだった。

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