「黙れ!! それ以上言うと許さんぞッ!!!」
「ははっ。そうやってムキになるところが、ますます怪しいってもんだぜ? 本当はエドも分かってるんじゃないか?」
「この……ッ」
エドワード王子が剣を抜いた。
そのままカインへと斬りかかる。
「おぉっと」
カインはそれを難なく受け止めた。
激しい鍔迫り合いが発生する。
二人とも一歩たりとも譲らない。
そんな騒ぎを聞きつけてか、女生徒達がまた集まってきた。
「わぁっ! 一日に二試合なんて、珍しいですわね!」
「それも、いつもは休憩なさっている場所で……?」
「ご様子がおかしいですわ! まるで、本気で殺し合いをなさっているような……」
女生徒達の多くは、剣術の心得を持っていない。
だが、曲がりなりにも長い間観戦してきた者達だ。
エドワード王子とカインの様子が普段とは異質なことに気付いた。
「ほぅら、やっぱりギャラリーが増えてきたぜ? いいのかぁ? 国の将来を担う次期国王様が、一時の感情で剣を振りかざしてよぉ」
「ぐぬ……ッ」
エドワード王子は悔しげに歯噛みした。
それから、大きく後ろへ飛び退いて距離を取る。
そして、再び構えを取った。
「【跪け】!」
エドワード王子の放った一言。
それには『覇気』が込められている。
イザベラのそれと同種だ。
カインはそれに抗ったが――
「きゃあっ!?」
「か、体が勝手にっ!?」
「ひぃっ! か、顔に傷が……」
女生徒達は、エドワード王子の言葉に縛られて動けなくなった。
中には顔ごと勢いよく跪いたことで、傷を負ってしまった女生徒さえいた。
「下等な女共め……。俺の邪魔をするなぁっ!!!」
「う、ああぁ……」
「あうっ……」
エドワード王子の『覇気』を受けて、女生徒達が意識を失っていく。
「ひゅうっ! やるねぇ!」
だが、カインは平然としていた。
彼は口笛を吹きながら、剣をくるりと回して肩に乗せる。
「お前とは、どうやら優劣をはっきりさせておく必要があるようだ」
「そのために、邪魔な目撃者を消したってか? ファンなのに可哀想じゃねぇか」
「抜かせ。イザベラ以外の女など、ただの雌猿と同じだ」
「へへっ。ま、概ね同感かな――っと!」
カインは倒れ込んでいる女生徒を掴み上げると、エドワード王子に向けて投擲した。
エドワード王子はそれを軽く躱すと、そのままカインに攻撃を加える。
「チィッ! いい反応するじゃねぇか!」
「ふん。お前のやりそうなことは読めているさ」
エドワード王子とカインの戦いは熾烈を極めていく。
ファンの女生徒達は大なり小なり被害を被った。
しかし幸か不幸か、それが二人によるものだと知ることはなかったのだった。
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