「……であるからして……」
先生の声だけが響く静かな教室。
窓から差し込む日差しが眩しい。
(やっぱり、錬金術の授業は楽しいなぁ……。前世では、化学が苦手であまり好きじゃなかったけど、錬金術は好きなんだよねぇ)
この世界には魔力が溢れているため、現代日本ではできなかったことができる。
それが楽しくて仕方がないのだ。
「姉上……。勉学に励まれる姿も素敵です……」
隣に座るフレッドが呟いた。
私はそれを聞き逃さなかった。
「フレッド。授業中に変なこと言わないの」
「すみません。でも、本心なので……」
「全く……」
困った弟だ。
私が彼の母親を治療してからというもの、ずっとこうなのだ。
まあ、嫌ではないんだけどさ。
むしろ、懐かれて嬉しいくらいだし。
ただ、ちょっと距離感を間違えている気がするのよね。
私と彼は血が繋がっていないとはいえ、姉弟なわけで……。
「……」
フレッドを見ると、彼は頬を赤らめながら、キラキラとした目でこちらを見ていた。
「……」
どうしよう。
これって、どうしたらいいの?
私、どうすればいい??
ずっと放っておくわけにもいかないよねぇ……。
「フレッド。授業に集中できないようなら、今すぐ帰りなさい」
「えぇー。姉上ひどいです」
「ひどくありません。あなたはもう子供じゃないでしょう。しっかりしなさい」
厳しい言い方かもしれないけれど、仕方ない。
どこの世界に、授業中ずっと姉の横顔を眺めている弟がいるんだ。
変な噂になったらどうする。
「はい。分かりました」
フレッドはしょんぼりとして返事をした。
そして、その後は静かにノートを取っていた。
……本当に分かっているのかなぁ。
少し心配だ。
「姉上は、僕が嫌いなんですか?」
フレッドがボソッと聞いてきた。
私は彼を見ずに答える。
「嫌いではないわよ」
「良かった……」
ホッと息を吐く音が聞こえた。
「姉上。僕は姉上のことが大好きですからね」
フレッドはそう言って笑っていた。
我が弟ながら、やっぱりイケメンだなぁ。
さすがは『ドララ』の攻略対象なだけはある。
俺様気質で万能な次期国王のエドワード殿下。
男らしいイケメンで肉体派、子爵家の養子であるカイン。
眼鏡を掛けた知的なイケメンで氷魔法を操る、伯爵家子息のオスカー。
そして、やや背が小さいながらも将来性を感じさせるイケメン、フレッド。
どのキャラも魅力的なキャラクターだった。
(あの予知夢がなければ……。私が悪役令嬢のイザベラじゃなかったら、みんなと仲良くできたのに……)
私はそっとため息をつきつつ、授業を真面目に受けたのであった。
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