今は三月。
私が第二学年から第三学年に進級する直前の連休中だ。
「姉上! 久しぶりの帰郷ですね! ご一緒できて嬉しいです!!」
「ええ、私もよ。フレッド」
私は、義弟フレッドと馬車に揺られている。
私達が普段通っている王立学園は王都にあるので、故郷のアディントン侯爵領に帰省するタイミングは限られているのだ。
進級直前の長期休暇――つまり春休みに帰郷しない手はない。
「久しぶりにお父様やお母様に会えるのね。フレッドは何か用事があるの?」
「僕も、母上に会うのを楽しみにしていますね」
「そう……。相変わらず、フレッドはお母さん想いね」
私とフレッドは、義理の姉弟だ。
私は、アルフォンス・アディントン侯爵とその正妻の娘。
フレッドは、分家夫婦の息子。
だが彼の父は若くして亡くなってしまったため、未亡人となった母カティはアルフォンスと再婚した。
血は繋がっていないが、私とフレッドは本当の姉弟のように育てられてきた。
「母上が生きていられるのも、姉上が頑張ってくれたおかげです」
「大袈裟よ。私なんて、できることをしただけだし」
「そんなことはありませんよ。不治の病とされていた魔乏病の特効薬を開発されたのですから。姉上はすごい人です!」
「……」
私は照れくさくて顔を逸らす。
本当の姉弟のように育てられてきた私達だけど、転機となる事件があったんだよね。
それが、フレッドが言った魔乏病の特効ポーションの件。
私が八歳、彼が七歳の頃だ。
この頃を境に、彼は重度のシスコンになった。
そして、事あるごとに求婚までしてくるようになった。
血は繋がっていないとはいえ、義理の姉弟で結婚するなんてどう考えても不味いのに……。
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