私は、エドワード殿下、カイン、オスカーからの手紙に頭を悩ませている。
秋祭りに誘われてしまったのだ。
口頭ならやんわりと断ることもできたのだが、家紋付きの手紙ともなれば安易に断ることはできない。
「姉上が悩まれている……。僕も何か力になりたい……」
フレッドも共に考えてくれている。
まぁ、彼には内容を伝えていないので、考えるにしても限界があるだろうけど。
純粋に心配してくれているのは有り難い。
「そうだ! 閃きましたよ!」
フレッドはハッとした表情になった。
そして、ポンッと手を叩いた。
「どうしたの?」
「悩みがある時は、気分転換に限ります! 別の事柄に集中すれば、案外簡単に答えが出ることもありますよ」
「ふむ、一理あるかもしれないわね」
確かに、一人で悩んでいても、なかなかいい案が浮かんでこないことはある。
そういう時に、他のことを考えると意外といいアイディアが出てくることはよくあることだ。
「そこで、提案です。今度の秋祭り、僕と二人で行ってみるのはいかかでしょうか?」
「へ?」
「僕に任せてください。お小遣いは貯めているので、何でも買って差し上げますよ。リンゴでも焼きそばでもたこ焼きでも!」
「え? あ? ちょっ……」
私は、弟の提案に戸惑ってしまった。
私としては、三人を断る口実を考えていただけなのだ。
それがまさか、弟の方からデートに誘ってくるなんて予想していなかった。
というか、これではますます困ったことになるではないか。
先に約束していたアリシアさん。
少し前に手紙を出してきたエドワード殿下、カイン、オスカー。
そして、たった今誘ってきた義弟のフレッド。
私の体は一つしかないのに……。
「さぁ! そうと決まれば、早速予定を決めていきましょう! 当日はこの時間から……」
「いやいやいや、ちょっと待って。まだ心の準備ができていなくて……。ドレスも決めないとだし……」
「そんなものは必要ありません。僕達は姉弟ではありませんか! ただ一緒に遊びに行って、楽しく過ごせばそれでいいのです!」
「うーん、そうなんだけどねぇ……。ほら、一応年頃の娘だし? 少しくらいは……」
「大丈夫です。姉上はどんな格好をしてても綺麗ですから!」
「はぅ!?」
私は、弟の言葉にキュンとしてしまった。
何という殺し文句だろうか。
これは断れない……。
(いや、ダメダメ! アリシアさんとの先約があるんだから!!)
男に誘われて、先約を反故にするなんて、人としてダメな気がする。
ここは踏ん張らないと……。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!