イザベラはゴーレムに向けて最下級の木魔法を放った。
通常ではゴーレムを粉砕する威力を出すことは難しいが――
「【貫きなさい】」
イザベラの言葉に反応し、魔法でできた木の槍が加速する。
通常よりも速いスピードで、ゴーレムに向かって飛んでいく。
「「なっ……!?」」
驚く四席と五席。
イザベラが放った魔法は、そのままゴーレムに直撃し、貫通した。
「「「…………」」」
四席と五席、講師、その他の生徒達。
全員が無言になる中、イザベラは悠然と振り返り、得意げに言った。
「ずいぶんと脆いゴーレムですこと……。これなら、威力を上乗せせずとも良かったかもしれません。まぁいずれにせよ、これでわかったでしょう? 私がどれほどの力を持っているのか」
イザベラは、自分がいかに優れているかをアピールするように語った。
自分の力を誇示する――以前の彼女であれば、避けていたことだ。
しかし、今の彼女は違う。
自信に満ち溢れており、他者を見下すような態度を取るようになった。
「さて、それでは……講師さん?」
「…………」
「講師!」
「えっ、あ、はいっ! 何でしょうか?」
講師は思わず敬語で返答してしまった。
王立学園には、身分を振りかざすことは避けるという建前がある。
そのため、生徒がどれほど高い身分で、講師がどれほど低い身分であっても、互いに敬意を持って接しなければならない。
そのルールは、侯爵家令嬢のイザベラにも同じく適応されているはずだ。
しかし今だけは例外だった。
皆が注目する彼女からは、まるで覇王のような威圧感が放たれているのだ。
上級の氷魔法でゴーレムを撃破したオスカーとは、また一段レベルが異なる。
イザベラは初級の木魔法――それもわずか一発だけで、ゴーレムを屠ってしまったのだ。
講師にとって、目の前の少女はもはや格上の存在であり、逆らうことなどできない存在となっていた。
「私の成績はどうですかしら? 首席になれそうかしら?……お答えくださいまし」
「そ、それは……」
「はっきり言いなさい!」
「ひぃっ!」
高圧的な口調のイザベラに気圧される講師。
彼はなんとか言葉を絞り出すように口を開く。
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