乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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144話 貫きなさい

公開日時: 2022年11月21日(月) 14:30
文字数:866

 イザベラはゴーレムに向けて最下級の木魔法を放った。

 通常ではゴーレムを粉砕する威力を出すことは難しいが――


「【貫きなさい】」


 イザベラの言葉に反応し、魔法でできた木の槍が加速する。

 通常よりも速いスピードで、ゴーレムに向かって飛んでいく。


「「なっ……!?」」


 驚く四席と五席。

 イザベラが放った魔法は、そのままゴーレムに直撃し、貫通した。


「「「…………」」」


 四席と五席、講師、その他の生徒達。

 全員が無言になる中、イザベラは悠然と振り返り、得意げに言った。


「ずいぶんと脆いゴーレムですこと……。これなら、威力を上乗せせずとも良かったかもしれません。まぁいずれにせよ、これでわかったでしょう? 私がどれほどの力を持っているのか」


 イザベラは、自分がいかに優れているかをアピールするように語った。

 自分の力を誇示する――以前の彼女であれば、避けていたことだ。

 しかし、今の彼女は違う。

 自信に満ち溢れており、他者を見下すような態度を取るようになった。


「さて、それでは……講師さん?」


「…………」


「講師!」


「えっ、あ、はいっ! 何でしょうか?」


 講師は思わず敬語で返答してしまった。

 王立学園には、身分を振りかざすことは避けるという建前がある。

 そのため、生徒がどれほど高い身分で、講師がどれほど低い身分であっても、互いに敬意を持って接しなければならない。

 そのルールは、侯爵家令嬢のイザベラにも同じく適応されているはずだ。

 しかし今だけは例外だった。

 皆が注目する彼女からは、まるで覇王のような威圧感が放たれているのだ。

 上級の氷魔法でゴーレムを撃破したオスカーとは、また一段レベルが異なる。

 イザベラは初級の木魔法――それもわずか一発だけで、ゴーレムを屠ってしまったのだ。

 講師にとって、目の前の少女はもはや格上の存在であり、逆らうことなどできない存在となっていた。


「私の成績はどうですかしら? 首席になれそうかしら?……お答えくださいまし」


「そ、それは……」


「はっきり言いなさい!」


「ひぃっ!」


 高圧的な口調のイザベラに気圧される講師。

 彼はなんとか言葉を絞り出すように口を開く。

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