乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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66話 回復魔法

公開日時: 2022年7月26日(火) 22:13
文字数:1,001

 オスカーが腰を痛めた。

 やはり、魔法系の彼が力仕事をするのは無理があったらしい。


「さあ、イザベラ殿、アリシア殿。気を取り直して帰ることにしましょうか。魔獣の死体は、やはり置いていくことにしましょう」


「お待ち下さい。腰の痛みは大丈夫なのですか?」


「少し痛みますが、何とかなるでしょう。魔獣の死体を持つことを諦めれば、そこまで負担は掛かりませんので」


「…………」


 うーん。

 やっぱり、少し無理しているよね。


「では、私が回復魔法を使いましょう」


「え? イザベラ殿は回復魔法も使えるのですか!?」


 オスカーは驚いたように目を見開いた。


「はい。あまり自信はないのですけれど……」


 回復は、ポーション類に頼り切りだった。

 回復魔法を使えるようになったのは、ここ最近のことだ。

 私は両手をかざすと、意識を集中させる。


「聖なる癒しの力よ。この者の傷を治せ。【ヒーリング】」


 私の掌から淡い光が放たれる。

 その光はオスカーの腰を包み込んだ。


「どうですか?」


「おおっ! 痛みが消えましたよ!」


「これでもう大丈夫ですね」


「いやはや……。素晴らしいです。回復魔法を使えること自体にも驚きましたが、まさかこれほどの効力があるとは!」


 オスカーが感心した様子で言う。

 私もホッとした。

 上手く使えて良かった。

 もし失敗したら、とても恥ずかしかっただろう。


「さすがはイザベラ様です!! 何でもできて凄すぎます!!!」


 アリシアさんは興奮気味に言った。


「いえ。そんなことは……。それに、アリシアさんの光魔法だって大したものじゃない。私は光魔法を使えないから、羨ましいわ」


「そう言って頂けると嬉しいです。でも、イザベラ様の方が凄いですよ。いろんな魔法を使えて、身のこなしも凄くて、勉強もできるし、オシャレやマナーも完璧だし、何より優しいです。わたし、イザベラ様のことが大好きです!!!」


「そ、そうなんだ。ありがとう、アリシアさん」


 私は照れながら答える。

 面と向かって褒められると、なんだかくすぐったいな。


「イザベラ殿は、本当に努力家な方です。最初から全てをできるのではなく、会う度に新しい知識や技術を身につけている。それなのに決して慢心せず、常に謙虚な姿勢を忘れない。まさに尊敬すべき女性です」


 オスカーが言う。

 彼は、いつもこんな感じで私をべた褒めしてくれる。

 正直、かなり恥ずかしい。

 だけど、彼の言葉には嘘がない。

 本気で言っているのだと伝わってくる。

 だから、私は嬉しかった。

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