オスカーが腰を痛めた。
やはり、魔法系の彼が力仕事をするのは無理があったらしい。
「さあ、イザベラ殿、アリシア殿。気を取り直して帰ることにしましょうか。魔獣の死体は、やはり置いていくことにしましょう」
「お待ち下さい。腰の痛みは大丈夫なのですか?」
「少し痛みますが、何とかなるでしょう。魔獣の死体を持つことを諦めれば、そこまで負担は掛かりませんので」
「…………」
うーん。
やっぱり、少し無理しているよね。
「では、私が回復魔法を使いましょう」
「え? イザベラ殿は回復魔法も使えるのですか!?」
オスカーは驚いたように目を見開いた。
「はい。あまり自信はないのですけれど……」
回復は、ポーション類に頼り切りだった。
回復魔法を使えるようになったのは、ここ最近のことだ。
私は両手をかざすと、意識を集中させる。
「聖なる癒しの力よ。この者の傷を治せ。【ヒーリング】」
私の掌から淡い光が放たれる。
その光はオスカーの腰を包み込んだ。
「どうですか?」
「おおっ! 痛みが消えましたよ!」
「これでもう大丈夫ですね」
「いやはや……。素晴らしいです。回復魔法を使えること自体にも驚きましたが、まさかこれほどの効力があるとは!」
オスカーが感心した様子で言う。
私もホッとした。
上手く使えて良かった。
もし失敗したら、とても恥ずかしかっただろう。
「さすがはイザベラ様です!! 何でもできて凄すぎます!!!」
アリシアさんは興奮気味に言った。
「いえ。そんなことは……。それに、アリシアさんの光魔法だって大したものじゃない。私は光魔法を使えないから、羨ましいわ」
「そう言って頂けると嬉しいです。でも、イザベラ様の方が凄いですよ。いろんな魔法を使えて、身のこなしも凄くて、勉強もできるし、オシャレやマナーも完璧だし、何より優しいです。わたし、イザベラ様のことが大好きです!!!」
「そ、そうなんだ。ありがとう、アリシアさん」
私は照れながら答える。
面と向かって褒められると、なんだかくすぐったいな。
「イザベラ殿は、本当に努力家な方です。最初から全てをできるのではなく、会う度に新しい知識や技術を身につけている。それなのに決して慢心せず、常に謙虚な姿勢を忘れない。まさに尊敬すべき女性です」
オスカーが言う。
彼は、いつもこんな感じで私をべた褒めしてくれる。
正直、かなり恥ずかしい。
だけど、彼の言葉には嘘がない。
本気で言っているのだと伝わってくる。
だから、私は嬉しかった。
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