「――お待ち下さい!」
するとそこに、オスカーの声が響いた。
オスカーの視線は、イザベラの隣に立つアリシアへと向けられている。
「アリシア殿! どういうことですか? なぜ貴女がそちら側にいるのです!?」
オスカーは怒号を上げた。
彼の言葉を受けて、アリシアの顔が歪む。
「ちっ……。黙って暴走してくれれば良かったものを……。瘴気の量が少なかったか……」
「アリシアさん? 一体何の話を?」
イザベラが疑問の声を上げる。
「いえ、なんでもありませんよ。――【ダーク・ミスト】」
アリシアは即座に誤魔化すと、闇魔法を発動させた。
周囲に濃い霧が漂い始める。
「あっ……」
「ぐっ……」
周囲にいた生徒達が次々と倒れていった。
「こ、これは……?」
「大丈夫ですよ、イザベラ様。ただ眠っただけです」
「そうなの? どうして突然……」
「寝不足だったのでしょう。どうあれ、邪魔な野次馬共を一掃することができました。仕上げを行います」
アリシアが手を掲げると、広がっていた霧が収束していく。
そしてそれは、オスカーの元へと向かった。
「なっ!?」
「【ダーク・ミラージュ】」
「ぐ、ぐおおおおぉぉっ!!!」
オスカーが絶叫する。
彼の口元から侵入した闇の瘴気は、体内を駆け巡り、オスカーの肉体を蝕んでいく。
元より黒く濁り気味だった彼の瞳は、さらにドス黒い色に染まっていった。
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