義弟フレッドの暴走を止めるため、私も参戦した。
これで四対一だ。
さすがに優勢になるだろう。
「【アイスブレード】」
「【ライトニング・ボルト】」
「いくぜっ! うおおおぉっ!!」
オスカーとエドワード殿下が畳みかけるように魔法を放つ。
さらに、身体強化魔法を発動したカインも剣で攻撃を加える。
それらは全て、フレッドの植物の壁によって防がれてしまうのだが……。
「そろそろ、かな?」
私は小さく呟いた。
三人の攻撃に気を取られ、フレッドの注意力が散漫になっているのを感じる。
今ならいけるかもしれない。
「【聖光よ。闇を――」
「【ウッド・クレイドル】」
だが、呪文を唱え終わる前に、フレッドは魔法を放ってきた。
それは、植物の壁ごと、私たち全員を飲み込もうとしてくる。
「くっ! こんな魔法もあるのか!?」
「きゃあっ! なにこれ、動けない……っ」
「これは厄介ですね……」
私達は、植物の蔦に囚われてしまった。
なんとか脱出を試みるが、上手くいかない。
それどころか、どんどん魔力を吸われていく。
このままでは、全員が衰弱死してしまいそうだ。
「へへっ。俺の出番ってわけだな」
そう言って、不敵に笑うカイン。
身体強化魔法の恩恵で、一人だけ蔦を回避していたらしい。
確かに、彼ならばこの状況を打破できるかもしれない。
「カイン。頼むわ」
「おうよ。任せておきなって」
「…………」
カインとフレッドが睨み合う。
そして次の瞬間、フレッドはカインに向けて手を突き出した。
その手のひらから放たれるのは、土の魔法。
「おっと! そんなもの当たるかよ!」
しかし、それはカインにあっさりと避けられてしまう。
カインはそのままフレッドに接近していき、その首元に剣を当てた。
「チェックメイトだぜ」
「……ちっ」
フレッドは悔しそうな表情を浮かべたあと、観念して両手を上げた。
彼がただの賊なら、カインは容赦なく首をとばしていただろう。
最低でも、腕や足を切り付けて行動不能にしていたはずだ。
でも、フレッドは私の義弟だから、穏便に収めてくれたようね。
いずれにせよ、これで解決――
「危ないっ! カイン!!」
「なにっ!?」
だが、フレッドはまだ諦めていなかったようだ。
彼は密かに練り上げていた魔力を開放する。
それは、一瞬の出来事だった。
「【ダーク・スピア】」
フレッドの手のひらから黒い槍のようなものが発射され、それがカインのお腹を貫いていたのだ。
「ぐあぁあああっ!!!」
「カ、カイ……ン……」
腹部を貫かれたカインは、そのまま膝をついた。
傷口からは、ドクドクと血が流れ出しており、致命傷を負っているのが分かった。
すぐにでも治療しなければ、間に合わないだろう。
これは非常にマズい状態だ。
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