乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

146話 あなた達に足りないもの

公開日時: 2022年11月28日(月) 09:03
文字数:732

「ぐっ……。くそっ、くそっ!! 俺達の努力は何だったんだ!」


「わたくし達は、来る日も来る日も魔法の鍛錬に明け暮れてきましたのに……。わたくし達に何が足りないというのです……?」


 四席と五席の生徒が悔しげに歯噛みする。

 彼らは、イザベラとオスカーを追い抜くことを目標に、血の滲むような努力を重ねてきたのだ。

 しかし、いざ蓋を開けてみれば、二人は彼らを置いてどんどん先に進んでしまう。

 特に、イザベラの伸び方は異常だった。

 まるで、これまでは手を抜いていただけと言わんばかりに、めきめきとその成績を伸ばしているのだ。

 彼らの精神的ショックは計り知れない。

 他の一般生徒は、まだ幸福だっただろう。

 イザベラをドラゴンとすれば、彼ら一般生徒はアリだ。

 その実力差すら、まともに把握できやしない。

 それに対して、四席と五席はネズミくらいの実力はある。

 ドラゴンの圧倒的実力を前に、格の差を思い知り絶望したのだ。


「ふふふ。あなた達に何が足りないか……。よろしければ、教えて差し上げましょうか?」


 意気消沈する二人に、イザベラは声をかけた。


「あ、ああ! 教えてくれ!!」


「いったいどこで、これほどの差が生じてしまったのですか!?」


 二人の切羽詰まった様子に、イザベラは笑みを深める。

 そして、ゆっくりと口を開いた。


「あなた達に足りないもの……それは才能ですわ」


「……は?」


「……え?」


「聞こえませんでした? あなた方の耳は飾り物なのかしら? それとも、脳ミソが腐っているのかしら? まぁ、どちらにせよ、答えは同じですけれど」


 イザベラは冷たく言い放つと、言うべきことは終わったと言わんばかりに踵を返した。

 そして、オスカーと一緒にその場を離れる。

 残された四席と五席は、ただ絶望した表情でその場にうずくまっているのだった。

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