乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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202話 イザベラ嬢-5【カイン視点】

公開日時: 2023年6月12日(月) 11:29
文字数:553

 俺は奮起して頑張り続けた。

 だが、どこかで無理をしていたらしい。

 気が付けば、秋祭りの事故で闇の瘴気とやらに侵されてしまっていた。


「……イザベラ……嬢……」


 俺は混濁する意識の中で必死に抗う。

 このままでは最愛の人を傷付けてしまいそうだ。

 しかし、体が思うように動かない。

 俺の剣は、彼女を傷付けるために鍛えたんじゃないのに……。

 俺はイザベラ嬢の目の前まで進んでしまう。

 もはや一刻の猶予もない。


「――ガアッ!! アアアアァッ!!!」


 俺は最後の力を振り絞って、自分の剣で自分の腕を突き刺した。

 絶対にイザベラ嬢を傷付けられないように、何度も何度も……。

 そして仕上げに、自分の胸へと突き刺す。

 俺が死ねば、少なくとも俺の手で彼女を傷付けることはない。


「幸せになってくれ……イザベラ嬢……」


 俺は最後にそう言い残して、その場に倒れ伏した。

 そして、意識がどんどん遠のいていくのがわかる。


(これでよかったのかもしれないな……。イザベラ嬢のために死ねるのならば本望だ……)


 薄れゆく意識の中、そんなことを考える。

 しかし――


「――ごめんなさい。エドワード殿下、フレッド、カイン、オスカー。そして……アリシアさん……」


 イザベラ嬢のそんな言葉が聞こえた。

 そうだ……俺が自害して終わりのはずがないではないか。

 他にも脅威はある。

 俺にできることは……。

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