「さあ、オスカー様の腰も癒えましたことですし、今度こそ帰りましょうか」
私はそう切り出す。
「そうですね。行きましょう」
「魔獣の回収は、後で私の方から手配しておきますので」
イザベラさんとオスカーがそう言う。
「いえ、その必要はないですよ?」
「何故です? イザベラ殿。氷漬けにしているので、他の魔獣が今すぐ血に惹き寄せられることはありませんが、このまま放置していてはいずれ溶けます。そうなれば、近隣で魔獣の被害が出てしまうかもしれません」
オスカーがそう言う。
その指摘は至極最もなことだ。
魔獣を置いていくなら、そうなってしまうだろう。
「ほいっと」
私は『覇気』を開放し、魔獣の死体を持ち上げる。
氷漬けになっているので不潔ではないし、アリシアさんの光魔法で冷気も抑えられている。
これなら、私が担いで運んでいけばいいだけだ。
「なっ!? バ、バカな……」
オスカーが驚愕の声を上げる。
「はわわ……。やっぱりイザベラ様は最高ですぅ! こんなに力がお強いなんて!!」
アリシアさんは目を輝かせていた。
「あの……。二人とも、どうかしました?」
私は首を傾げる。
「どうしたもこうしたもありませんよ。イザベラ殿の身体能力は知っているつもりでしたが、まさかこれほどとは……」
「わたしもビックリしています……。魔力を体に流されているのでしょうか? 同じ女性でこんなに凄い力を持つ方がいるなんて」
二人は呆然としていた。
まぁ、無理もないかな?
魔法を応用すれば、身体能力を向上することができる。
さっきオスカーがやっていたようにね。
でも、その効果は限定的だ。
もっと身体能力を上げるためには、特殊な技術が必要になる。
例えば『覇気』のように。
でも、覇気の存在を知っている人は少ない。
アリシアさんも、私の技術は魔法に類するものと思ったみたいだ。
「まあ、鍛えていますからね」
わざわざ覇気を使って魔獣を担いだのは、ちょっと迂闊だったかな?
別に命の危険があるわけでもないし、後で誰かに回収に来てもらえばよかったかもしれない。
ま、別にこれはこれで悪くはないけど。
いつまでも能力を隠しておけるわけでもない。
いざという時に気兼ねなく使えるよう、適度に周知しておくのは悪いことじゃないはずだ。
「なるほど! さすがはイザベラ様! わたしも鍛えます!!」
アリシアさんは、私が言ったことを素直に受け止めた。
「……そういうことにしておきましょうか。イザベラ殿は本当に不思議な方です」
オスカーは苦笑しながら、そう呟いたのだった。
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