乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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67話 ほいっと

公開日時: 2022年7月27日(水) 09:41
文字数:1,020

「さあ、オスカー様の腰も癒えましたことですし、今度こそ帰りましょうか」


 私はそう切り出す。


「そうですね。行きましょう」


「魔獣の回収は、後で私の方から手配しておきますので」


 イザベラさんとオスカーがそう言う。


「いえ、その必要はないですよ?」


「何故です? イザベラ殿。氷漬けにしているので、他の魔獣が今すぐ血に惹き寄せられることはありませんが、このまま放置していてはいずれ溶けます。そうなれば、近隣で魔獣の被害が出てしまうかもしれません」


 オスカーがそう言う。

 その指摘は至極最もなことだ。

 魔獣を置いていくなら、そうなってしまうだろう。


「ほいっと」


 私は『覇気』を開放し、魔獣の死体を持ち上げる。

 氷漬けになっているので不潔ではないし、アリシアさんの光魔法で冷気も抑えられている。

 これなら、私が担いで運んでいけばいいだけだ。


「なっ!? バ、バカな……」


 オスカーが驚愕の声を上げる。


「はわわ……。やっぱりイザベラ様は最高ですぅ! こんなに力がお強いなんて!!」


 アリシアさんは目を輝かせていた。


「あの……。二人とも、どうかしました?」


 私は首を傾げる。


「どうしたもこうしたもありませんよ。イザベラ殿の身体能力は知っているつもりでしたが、まさかこれほどとは……」


「わたしもビックリしています……。魔力を体に流されているのでしょうか? 同じ女性でこんなに凄い力を持つ方がいるなんて」


 二人は呆然としていた。

 まぁ、無理もないかな?

 魔法を応用すれば、身体能力を向上することができる。

 さっきオスカーがやっていたようにね。

 でも、その効果は限定的だ。

 もっと身体能力を上げるためには、特殊な技術が必要になる。

 例えば『覇気』のように。

 でも、覇気の存在を知っている人は少ない。

 アリシアさんも、私の技術は魔法に類するものと思ったみたいだ。


「まあ、鍛えていますからね」


 わざわざ覇気を使って魔獣を担いだのは、ちょっと迂闊だったかな?

 別に命の危険があるわけでもないし、後で誰かに回収に来てもらえばよかったかもしれない。

 ま、別にこれはこれで悪くはないけど。

 いつまでも能力を隠しておけるわけでもない。

 いざという時に気兼ねなく使えるよう、適度に周知しておくのは悪いことじゃないはずだ。


「なるほど! さすがはイザベラ様! わたしも鍛えます!!」


 アリシアさんは、私が言ったことを素直に受け止めた。


「……そういうことにしておきましょうか。イザベラ殿は本当に不思議な方です」


 オスカーは苦笑しながら、そう呟いたのだった。

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