乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

150話 フレッドとイザベラ

公開日時: 2022年12月12日(月) 09:31
文字数:756

 さらに日々は過ぎていく。

 新たな年を迎え、一月となった。

 この『ドララ』世界の暦や季節感は、現代日本に準拠している。

 日本で制作されたゲームだからだ。

 三月になれば卒業生を見送る立食パーティが開かれる。

 そして四月になると新入生を迎えると同時に、それぞれ進級する。

 現在第二学年のイザベラやアリシアは第三学年に、第一学年のフレッドは第二学年となるのだ。

 そのフレッドだが――。


「おはようございます、姉上。今日も素敵ですね。結婚を前提にお付き合いしてください」


「…………」


 イザベラは頭を抱えていた。

 フレッドが毎日のように求婚してくるようになったからだ。

 朝は必ず挨拶に来るし、休み時間には教室まで押しかけてくる。

 昼食時には食堂で相席しようとする。

 授業中や放課後にも、隙あらば愛の告白をしようとしてくる始末である。

 ちなみに今は、学園の授業終わりの休憩中だったりする。


「……フレッド、いい加減にしてちょうだい」


「はい、何でしょう?」


「あなたね、私にそんなことを言って恥ずかしくないの? 婚約者がいる身よ、私は」


「もちろん承知していますよ」


「ならどうして――」


「でも、僕の気持ちは変わりませんから。王子と結婚なんて、絶対に肩が凝りますよ。僕と結婚しましょう。煩わしい仕事なんて、姉上には振らないようにしますよ。だから――」


 イザベラは頭痛を覚えつつ、大きなため息を吐いた。

 フレッドは相変わらずだ。


「姉上は素晴らしい女性です。僕が幸せにします。結婚しましょう。子供は何人欲しいですか?」


「こ、子供ですって!? そ、それはまだ早いというか……」


「ふむ。では、いつ頃が良いでしょうか? やはり卒業まで待たないといけないでしょうか? 先はまだ長そうですね……」


「え、あ……」


 イザベラは真っ赤になって俯いた。

 その様子を見て、フレッドは満足げに微笑んでいる。

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