秋祭りを控えたある休日。
「ううーん……」
私は悩んでいた。
それはもう真剣に考えていた。
「どうしたんですか、姉上?」
フレッドがそう尋ねてくる。
ここは私の部屋だが、弟の彼は休日になるとよく入り浸りにくるのだ。
「うん……」
「悩み事ですか?」
「まあ、そんな感じ……」
「何でも相談に乗りますよ!」
「ありがとう。でも、これは自分で解決したいことなのよ」
「そうなんですか? 残念です……」
私はフレッドと会話をしながら、頭を悩ませていた。
(どうして、こんなことに……)
私は自室の机の上に置いた三通の手紙を見ながら、頭を抱えていた。
そこには、秋祭りに一緒に行かないかという誘いの手紙が置かれていた。
差出人は、それぞれエドワード殿下、カイン、オスカーだった。
(今年はアリシアさんと約束しているのよねぇ……。この三人、去年みたいに口頭で誘ってくれたら、やんわりと断ったのに!)
手紙には、三人共、私と二人で行きたいと書いてあった。
もちろん、全員断るつもりだ。
私の体は一つしかないしね。
だけど、どうやって断ればいいんだろう。
手紙には、それぞれ王家、レッドバース子爵家、シルフォード伯爵家の家紋が入っていた。
これを無碍に扱うことはできない。
去年のお誘いよりも、今年のお誘いの方がずっと思い意味を持つ。
(思い切って無視する? ううん、そんなことできるはずがないわね)
この手紙を無視すると、それはそれで問題になりそうだ。
王族や貴族にとって、社交辞令というのはとても大事なものだ。
手紙を無視されるということは、相手にする価値もないということになってしまう。
下手すると、貴族家同士の争いに発展する可能性もある。
「ううーん……」
「姉上、大丈夫ですか?」
「うん、問題ないわ……」
「さっきから、険しい顔をしていますよ?」
「ああ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていたのよ」
私は慌てて笑顔を作った。
「姉上、やはり僕に話してみてください。何か力になれるかもしれません」
「そうねぇ……。でも、この内容はなぁ……」
三人の男性からの秋祭りへのお誘い。
これはつまり、将来の結婚を見据えてという話でもある。
恋愛事の一種という見方もできる。
弟には相談しづらい事柄だ。
「あの聡明な姉上がここまで悩まれるとは……。僕にできることは……」
フレッドが顎に手を当てながらブツブツと言っている。
その様子はとても可愛らしく見える。
見た目はイケメンなのに仕草が可愛いとか反則すぎるでしょう。
乙女ゲームの世界だから仕方ないか。
私は思わず苦笑してしまうのだった。
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