乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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155話 フレッドとアリシアの密約

公開日時: 2022年12月29日(木) 10:45
文字数:694

 アリシアの軽口に対して、フレッドが彼女を睨み臨戦態勢を取る。

 今の彼であれば、か弱い女生徒を殺すことなど容易い。

 だが――


「怖いですわねぇ。そんなに睨まないでくださいよ。ちょっとした冗談ではありませんか」


 アリシアが飄々とした感じでそう言う。

 彼女は第二学年においてイザベラやオスカーに続く実力者であり、学年第三席となっている。

 いくら第一学年首席のフレッドとは言え、一方的な勝ちを収められる相手ではない。


「チッ」


 フレッドは盛大に舌打ちをした。

 かつての心優しい少年はもういない。

 闇の瘴気の影響は、これほどまでに大きいのだ。


「それで、僕に何か用なのか? 話があるなら、さっさと済ませてくれ」


「分かりました。では単刀直入に……」


 アリシアが怪しげな表情でフレッドに耳打ちする。

 かつての彼女は、純真無垢な少女だった。

 珍しい光魔法の才を見出され、母親の生活を楽にするために入学を決意したのだ。

 入学後に苛められていたところをイザベラに助けられてからは、彼女に心酔するようになった。

 やや行きすぎなところもあったものの、基本的には清廉潔白で純朴な少女であることに変わりはなかった。

 そんな彼女も、闇の瘴気の影響により人格に異変が生じている。


「……は?」


 アリシアの言葉を受けて、フレッドは呆けたような顔をする。


「ふふ。いい案でしょう?」


「だ、だがさすがにそれは――」


「迷う余地がありますか? このままでは、イザベラ様とエドワードの奴との結婚は避けられません。それはあなたにとっても不本意な結末なのでしょう? ならば、やるしかありませんよ」


「…………分かった」


 こうして、アリシアとフレッドの間でとある密約が交わされたのだった。

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